研究成果のご紹介

加齢による筋力の低下(サルコペニア)に対する
酵素分解ローヤルゼリーの有効性

東北大学大学院 医学系研究科 牛 凱軍(2008年度採択)
※現・天津医科大学 公衆衛生学院栄養疫学研究所

サルコペニアは老化に伴う筋肉量や筋力、身体能力の低下によって身体障害や生活の質の低下を引き起こしてしまう症状である。国内では65歳以上の高齢者の8人に1人がサルコペニアを患っており、年齢が上がるにつれてその数は増加している。特に近年では社会の急速な高齢化に伴うサルコペニアの患者数の増加が懸念されている。サルコペニアが発症する原因の一つに、筋肉の再生に重要な役割を果たす筋衛星細胞の減少が挙げられる。筋衛星細胞は筋肉内に存在する細胞であり、筋肉量が減ってくると活性化し、新たに筋肉を再生する。そのため、サルコペニアを予防するためには筋衛星細胞の機能やその数を維持することが重要な鍵となる。

一方、ローヤルゼリーはビタミン、ミネラル、アミノ酸を多く含み、寿命延長作用(マウス、線虫モデル)や骨密度低減抑制作用、抗酸化作用や抗炎症作用など様々な生理活性作用が報告されている。そこで東北大学の牛凱軍准教授(現・天津医科大学 公衆衛生学院栄養疫学研究所・教授)は、ローヤルゼリーがサルコペニアの予防に役に立つ可能性があると考え、ローヤルゼリー及び、酵素分解ローヤルゼリー(ローヤルゼリータンパク質を酵素分解して吸収率を高めたもの)を用いて筋力や筋衛星細胞に与える影響を検討する研究を行った。

まず、牛准教授らは、酵素分解ローヤルゼリーが筋衛星細胞に与える影響を培養細胞を用いて解析した。その結果、酵素分解ローヤルゼリーを添加した場合、何も与えていない場合に比べ筋衛星細胞の増殖率が有意に増加し、さらに分化誘導を促進することを確認した。

次に、実際にローヤルゼリーを飲用することで、筋肉量や筋力に与える影響を検討した。高齢モデルに5種類の餌(ローヤルゼリー無し、1%ローヤルゼリー含有、5%ローヤルゼリー含有、1%酵素分解ローヤルゼリー含有、5%酵素分解ローヤルゼリー含有)をそれぞれ3ヶ月与え、ローヤルゼリーを飲用していない群とローヤルゼリー及び酵素分解ローヤルゼリーを飲用した群で筋肉量や筋力を比較した。その結果、5%ローヤルゼリー、または1%、5%酵素分解ローヤルゼリーを飲用した群では、筋肉量(全体重あたり)の低下が抑制されることが明らかとなった。その作用は、飲用量が同じであれば、ローヤルゼリーよりも酵素分解ローヤルゼリーの方が高かった(図)。また、筋衛星細胞の細胞数を計測すると、5%ローヤルゼリー及び5%酵素分解ローヤルゼリーを飲用した群では筋衛星細胞の比率が増加していた。さらに、掴まり時間をもとに高齢モデルの筋力を測定したところ、5%ローヤルゼリー及び5% 酵素分解ローヤルゼリーを飲用した群では、3ヶ月経過後も握力が維持されていることを確認した。このことから、ローヤルゼリーは筋力の低下を防ぐ可能性が考えられる。

ローヤルゼリーは筋力の低下を防ぐ可能性が考えられる。

以上の結果から、牛准教授らは、ローヤルゼリーは筋衛星細胞の増殖により筋肉量、筋力を増加させサルコペニアの発症予防および病態悪化の軽減に有効であること、また、ローヤルゼリーよりも酵素分解したローヤルゼリーのほうが結果が良くなることを示唆した。現在、臨床への応用を目指した研究を実施中であり、その結果が期待される。

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