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山田英生対談録
予防医学 ~病気にならないために~

第十三回「健康的な食スタイル」

食べすぎは、明らかな老化の原因。

万病のもとである肥満を防ぐには、食事の量を減らすだけでなく、その食べ方も重要になってきます。朝食は抜かずに、朝・昼・夜と3食きちんと摂り、夜食はなるべく控える。早食いはやめ、よく噛んでゆっくり食べる。できれば、すぐに満腹感の得られやすい野菜から先に食べ、主食のご飯やパンは後回しにする。食べることは、まさに食文化であり、食習慣や食スタイルは健康とは切っても切れない大切な関係にあります。寿命と老化研究の第一人者で、順天堂大学大学院教授の白澤卓二さん(55)と山田英生・山田養蜂場代表(55)が健康によい食べ方や食卓での工夫などについて語り合いました。

1日3食を規則的に

山田

肥満は老化を早め、生活習慣病や認知症、がんなどを発症しやすい、といわれています。前回の対談で先生は、「肥満を防ぐには、『20歳の時の体重+5kg以内』に維持することを目標に、食事の量は『腹七分目』に抑えることが大切だ」とおっしゃいましたが、そのためにはどのような食生活を心がければ、よろしいのでしょうか。

白澤

食事は1日3食、規則正しく摂ることが大切です。「痩せたいから」といって食事を抜くのは、感心できませんね。特に若い人の中には、「食べなければ痩せられる」と思い込んでいる人が実に多いようですが、これは大きな間違いです。人間の体には、飢餓の状態に対応する仕組みがあります。1食でも抜けば、体は飢餓状態がやってきたと思って、次の食事の時に食べたものをできるだけ溜め込もうとする習性があり、これが肥満の原因になりやすいのです。

山田

「痩せよう」と思って1食抜いたのに、逆に太ってしまっては本末転倒ですね。最近、若い人を中心に朝食を抜く人が増えてきました。食べたとしても飲み物にお菓子とか、サラダ程度の軽食で済ませている人が多いようです。朝食抜きは、ダイエット目的の若い女性の間で特にはやっているようですが、男性でも最近メタボを意識してか、食べない人が目につきます。やはり朝食を食べないのは、健康上悪いですか。

白澤

よくありませんね。朝食を抜くと、前夜の夕食から翌日の昼食まで半日以上も時間があき、胃腸は次の昼食を待ち構えていたかのように最大限にカロリーを溜めようとします。こんな時に昼食を食べれば、糖質(ブドウ糖)の吸収が早まり、血糖値が急激に上昇したり、脂質が吸収されやすくなるのは、一目瞭然です。血液中の余分なブドウ糖やコレステロールが中性脂肪に換えられ、脂肪細胞に蓄積されやすくなります。
こうした朝食を抜く食生活が習慣化すれば、肥満にとどまらずインスリンの分泌量が減ったり、働きが悪くなって糖尿病や高血圧を引き起こすリスクが高くなります。また、食事を抜くことは栄養不足にもつながり、老化を早めることにもなりかねません。ですから、1日3食、それもできるだけ均等に食べることが老化予防や肥満対策には重要なのです。

避けたい深夜食

山田

でも、最近は夜遅くまで仕事をしたり、遊んだりする夜型人間が増え、深夜に食事を摂る人も少なくありません。こうした人は、朝早く起きられず、食欲や時間がないからといって朝食を食べずに、慌てて家を飛び出している人が多いようです。「夜遅く食事を摂ると、太りやすい」ともいわれていますが、深夜に食べるのは控えたほうがよいですか。

白澤

肥満者いない100歳夜遅く食べるのは、避けたほうが無難ですね。夜は昼間のように活動しないので、夜遅く食べるとエネルギーが消費されず、食べたものが中性脂肪となって脂肪細胞に蓄積されるため、太りやすくなるのです。「BMAL1(ビーマル・ワン)」という言葉をお聞きになったことがあると思います。脂肪を取り込むために働くタンパク質のことで、体内時計とも関係しています。日本大学の榛葉繁紀先生によると、時間によって分泌量が変わり、昼間は少なく夜になってから増え始め、特に午後10時から午前2時にかけて最も多く分泌されるそうです=左はイメージ図。この時間帯に食事をすれば当然、脂肪を溜めやすくなり、太りやすくなりますね。ですから、夕食は遅くとも夜8時から9時ごろまでには食べ終えるようにしたいものです。

山田

そうすると、BMAL1の分泌量が少ない時間帯の昼食や朝食をしっかり食べ、夕食は夜の午後6時とか7時の早い時間帯になるべく軽めに食べるのが、太らないための最も効果的な方法ですね。

白澤

はい、そうです。

早食いは肥満のもと

山田

それと、最近気になるのは、早食いの人が増え、食事にかける時間が短くなってきたのではないか、ということです。外食の場合は、ハンバーガーショップや牛丼、カレー店などファストフードの店が増え、客の回転を速くしたい店側の仕掛けもあってか10分以内で食事を済ませる人が多いようです。自宅で食べる場合でも、手軽に食べられる出来合いの総菜などを、デパ地下などで買ってきては、限られた時間の中で食事を済ませる人が増えている、と聞きました。

白澤

確かに食事に時間をかけ、ゆっくり食べる人は以前に比べ確実に減ってきているようです。例えば朝食の場合、早い人なら5分もかけていないでしょう。朝、駅の立食いソバ屋では、注文して出てきたソバを3分くらいでかき込んで食べ終えている人もいます。家でもパン食なら10分もかけていないかも知れません。昼食だって、せいぜい15分くらいでしょう。比較的時間をかける夕食にしても30分ぐらいが普通ではないでしょうか。

山田

よく「早食いは太る」といいますが、本当ですか。

白澤

本当です。食事を始めてから満腹感を覚えるまで20分から30分かかります。ところが、よく噛まずに飲み込むように食べると、脳にある満腹中枢が「そろそろお腹がいっぱいだ」という信号を出す前に食べ過ぎて、太ってしまうのです。早食いを防ぐには、時間をかけてゆっくり食べるために、ひと口食べたら箸を置くような習慣をつけるのもよいですね。また、旬の野菜や果物、魚などの美味しさをじっくり味わって食べれば、早食いにはなりません。最低でも1回の食事に20分から30分はかけるようにしたいものです。

よく噛んで食べよう

山田

ゆっくり食べるには、よく噛んで食べるのがよい、ともいわれています。よく噛んで食べればそれだけ消化もよくなり、胃腸にも負担がかかりません。

白澤

100歳を超えても現役のプロスキーヤーだった故*三浦敬三さんも、総入れ歯ではありましたが、ひと口60回は噛むことを日課とし、圧力鍋で煮た鶏を骨まで食べておられました。三浦さんのように60回噛めれば申し分ありませんが、少なくとも30回は噛んでほしいですね。

山田

ヨーロッパではビールやワインを飲みながら食事に2時間、3時間かけるのも珍しくないといわれています。一方、日本では家庭での食事にせいぜい30分かければよいほうでしょう。親しい人と会話を楽しみながらゆったりと食事をするのは、豊かさの証しかも知れませんね。

白澤

まさに食べることは、その国の文化の一つといってもよいでしょう。ただ、お腹を満たすためだけに食べるのは、とても文化的とはいえません。ゆっくり味わって食べれば素材の持つ味や料理の味も、しっかり知ることができます。また、噛むことは、歯茎にある神経を通して脳に直接刺激を与え、脳の血流や代謝がよくなって脳の活性化にもつながります。よく噛むためには時々、ゴボウやニンジン、スルメやタコといった歯ごたえのある食材を選ぶのも一つの方法です。食材を大きめに切れば、自ずとよく噛むようになります。

食事はまず野菜から

山田

食事をする時、好きなものから先に食べる、それとも好きなものは取って置いて最後に食べる。人によって食べ方も千差万別です。お腹が空いていると、ご飯から先に食べたくなりますが、肥満を防ぐには「先に野菜を食べるほうがよい」との記事を新聞で読んだことがあります。

白澤

肥満者いない100歳その通りです。肥満を防ぐには、何から先に食べたらよいか、その順番も重要です。ご飯やパンなどの主食から先に食べると、糖質の摂り過ぎになることがあります。肥満防止のためには、まずサラダやおひたし、煮物、汁物など野菜から食べ始めるとよいでしょう。そのあと、肉や魚などの主菜を食べ、最後にご飯などの主食を食べるのが、太らない食べ方です=左はイメージ図。野菜や汁物の具には食物繊維を豊富に含む食材が多く、すぐに胃が膨らんで満腹感が得られやすいうえに、肉や脂っこい料理の脂質の吸収を抑えてくれます。しかも、ご飯などの糖質の吸収も緩やかにし、血糖値の急激な上昇を防いでくれます。

山田

食べる順番を変えるだけで肥満が予防でき、糖尿病予防にもつながれば、こんなによいことはありませんね。

白澤

それと、一度にたくさん食べる「ドカ食い」や、食べられる時に集中的に食べる「まとめ食い」、テレビを見たり、新聞を読んだりしながら食べる「ながら食い」も肥満予防の大敵であり、よくありません。また、食事の味付けが濃いと、ついつい食が進んで食べ過ぎてしまううえに、塩分の摂り過ぎで高血圧を招く恐れだってないとはいえません。ただ、いきなり塩分を極端に減らすと、食事がおいしくなくなりますので、少しずつ薄味に慣れるようにしていくことです。薄味に慣れれば、素材そのものの味も感じられるようになります。

山田

あと、食卓ではどんな工夫をしたらよいですか。

白澤

毎日の食事では、なるべく1人に1皿を盛り付けるようにしたほうがよいでしょう。大皿から取り分けて食べると、つい食べ過ぎてしまうこともあるからです。また、茶碗も小ぶりのものに換えたり、主菜にキャベツやレタスを添えればボリューム感も増し、少ない量でも食べた気がします。できれば、ご飯をひと口分、少なめによそう習慣も身につけたいですね。それと、リビングなどの目に見えるところにお菓子やケーキなどを置かないことです。

山田

毎日の暮らしの中でも、ちょっと工夫するだけで肥満防止につながるアイデアが結構ありますね。

白澤 卓二(しらさわたくじ)

1958年神奈川に生まれる。東京都老人総合研究所研究員等を経て現職。日本抗加齢医学会理事。専門は寿命制御遺伝子の分子遺伝学など。著書に「100歳までボケない101の方法」(文春新書)など多数。

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