蜂蜜とは

紀元前から、私たち人間の身近にある“蜂蜜”。
ここでは、“美味しい”に留まらない蜂蜜の奥深さに、
最新の科学をもって迫ります。

蜂蜜とは

意外と奥の深い蜂蜜の基本情報

ヒトは紀元前から蜂蜜を食べていた!

私たち人間は、ローヤルゼリーやプロポリスなど、様々なミツバチ産品を利用していますが、最も身近なミツバチ産品と言えば、蜂蜜を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

蜂蜜と人間の付き合いは古く、古代エジプト時代の太陽寺院から出土したレリーフには当時の養蜂の様子が描かれ、紀元前5000年頃から養蜂家が職業として成立していた記録が残されています。もちろん、美味しくて、栄養価値のある蜂蜜ですから、それ以前から食べていたであろうことは容易に推測できるでしょう。また、紀元前3000年頃にエジプトのナイル川河口のデルタ地域で、巣箱を用いた飼育型の養蜂が行われていたことを示す記録も残されています※1

その後、中世になると養蜂は北ヨーロッパやロシア方面へと拡大。さらにヨーロッパからの移民によって、アメリカ、オーストラリアにも広まり、養蜂技術も着実に進歩していきました。養蜂の世界的な拡大に加え、養蜂技術の飛躍的な進歩も相まって、蜂蜜は庶民も味わうことができる天然の甘味料として広まっていったのです。

そして、近年、テレビや新聞で蜂蜜の良さや活用方法を紹介する番組、記事が数多く報道され、蜂蜜はブームを迎えたとも言われています。養蜂家の減少により国内生産量こそ減少傾向にあるものの、年間約40000トンが輸入され、近年の不況下にあっても、その消費量は堅調に推移しています※2

蜂蜜の個性は花とともに

蜂蜜は、ミツバチが花蜜を集めて、巣に貯め、水分を蒸発させて糖度を約80 %になるまで濃縮したもので、ミツバチが訪れる植物(蜜源植物)は、主要なものだけでも世界で約4000種と報告されています※3。日本においても、亜寒帯から亜熱帯の気候帯にまたがっていることから、国土が狭いにも関わらず種類が多く、その数は補助蜜源を含め373種にも達します※1, 3。日本の代表的な蜜源植物としては、レンゲ、アカシア(ニセアカシア)、トチ、ミカン、ソバなどが挙げられます。

花の香りが種類によってそれぞれ違うように、蜂蜜の色も風味も、ミツバチが訪れる花によってそれぞれ異なる個性を創り出しているのです。そして、この蜜源植物に思いを寄せながら、多様な蜂蜜を味わうのが、蜂蜜を食べる時の楽しみと言えるでしょう。

蜂蜜は理想的な糖質補給源

蜂蜜とは、Codexの定義を引用すると、「植物の花蜜、植物の生組織上からの分泌物、または植物の生組織上で植物の汁液を吸う昆虫が排出する物質(甘露)からApis melifera種(セイヨウミツバチ)がつくりだす天然の甘味物質であって、ミツバチが集め、ミツバチが持つ特殊な物質による化合で変化させ、貯蔵し、脱水し、巣の中で熟成のためにおいておかれたもの」と説明できます※4

花蜜や甘露の主成分はショ糖ですが、ミツバチが分泌する酵素であるα-グルコシダーゼによって、ショ糖は蜂蜜中では果糖とブドウ糖に分解されています。ショ糖に比べて、ブドウ糖は腸からの吸収が早いため、速やかなエネルギー補給に適しています。一方、果糖は吸収が遅いため、ブドウ糖を追いかけるように後から吸収されることになります※1。つまり、即効効果のあるブドウ糖と、延長効果のある果糖が混合されているため、蜂蜜は糖質補給の点で理想的な食品であると考えられているのです※1

蜂蜜は理想的な糖質補給源

α-グルコシダーゼにより生成されたブドウ糖の一部はオリゴ糖に変化し、別の酵素によりグルコン酸に変化します。このグルコン酸は腸内の善玉菌であるビフィズス菌を増やすことが知られています※1。単に甘味料として利用するだけでなく、このような健康を増進する働きを期待して、日々の食生活に蜂蜜を取り入れている人も決して少なくはありません。そのため、近年、蜂蜜が持つ様々な健康増進効果を科学的に検証する研究が活発に進められています。

創傷の治癒を早め、子供の風邪による咳をやわらげる

例えば、蜂蜜に抗菌効果があることは古くから知られています。蜂蜜を手術に活用した歴史を辿ると、骨盤手術のルーツは、エジプトの医術書エバース・パピルス(紀元前1550年)や、古代ギリシャの医学者ヒポクラテス(紀元前400年)に遡ります。※5 また、古代ギリシャの哲学者であり、医学者でもあったアリストテレス(紀元前384~322年)は、数種類の蜂蜜を比較した上で、「創傷用の軟膏に淡色の蜂蜜がよい」と紹介しています※6
その後も、世界中の民間療法で傷口の雑菌感染の予防に蜂蜜が利用されてきました。その代表例と言えるのが、マヌカと呼ばれるフトモモ科の植物由来の蜂蜜です。「マヌカ蜂蜜(マヌカハニー)」と呼ばれて珍重されており、ニュージーランドのワイカト大学のピーター・C・モラン教授によって、高い抗菌活性があることが明らかにされています※6
マヌカ蜂蜜以外の蜂蜜についても、抗菌効果があることが確かめられており、手術の傷に蜂蜜を塗っておくと、3~6日間、無菌に近い状態が保たれ、傷の治癒が早まったとの報告もあります※7。そして、このような効果を発揮する理由として、粘性の高い蜂蜜が被膜となって雑菌の感染や傷口の乾燥を物理的に防ぐこと、さらに、高濃度の糖による高い浸透圧と抗菌成分により細菌の感染が抑えられることが挙げられます。これらの抗菌作用や保湿効果のほか、炎症をやわらげ、傷の皮膚組織を刺激して再生を促し、ガーゼ等の被覆剤を取ったときに再生組織を壊してしまうのを防ぐためであるとの理由も考えられています※6,8。さらに、皮膚の傷だけでなく、火傷の治癒が早まることも確認されています※8
また、蜂蜜は、子供の喉の感染症である風邪の症状を抑えるのにも有効であるとの報告もなされています※9。ペンシルバニア州立大学医学部小児科のイアン・ポール博士らの研究グループは、風邪(上気道感染)により咳が出続け睡眠不足になっている2~18歳の患者に対して、就寝前に咳止め薬(デキストロメトルファン)またはソバ蜂蜜を与えて、咳の症状と睡眠の質に対する効果を調べました。その結果、ソバ蜂蜜は、何も与えなかった場合と比べて咳の回数を抑え、咳による睡眠不足を改善しました。

創傷の治癒を早め、子供の風邪による咳をやわらげる

この研究の背景には、一般的な咳止め薬・デキストロメトルファンについて、大人には有効であっても、子供に対しては有効とする科学的根拠が乏しく、アメリカ小児科学会等では使用が推奨されていない状況があります。ポール博士は、親が子供のために効果が明らかでないこの薬に多額のお金を払っている状況を改善するため、1歳以上の子供には安全性の高い蜂蜜を用いて子供の咳止め効果を検討したと述べています※9。そして、子供の上気道感染による咳の緩和には、デキストロメトルファンよりソバ蜂蜜を推奨しています。

このように、蜂蜜には抗菌活性や創傷治療効果があることが報告されており、それ以外の薬効についても、科学的に検証する研究が積み重ねられています。そこで、当ウェブサイトでは、蜂蜜の薬効に関するさまざまな研究の成果を積極的に紹介してまいります。
※蜂蜜は生ものです。1歳未満の乳児には与えないでください。

参考文献
※1
中村純,ミツバチ科学, 22 (4), 145-158 (2001)
※2
社団法人日本養蜂蜂蜜協会
※3
佐々木正己,蜂からみた花の世界四季の蜜源植物とミツバチからの贈り物,海游舎(2010)
※4
鈴木峰夫,ミツバチ科学, 22(4), 159-164(2001)
※5
Cooke TJ,The Journal of Urology, 179 (6), 2126-30 (2008)
※6
P.C.Molan,ミツバチ科学, 23 (4), 153-160 (2002)
※7
D.Cavanagh, The Journal of obstetrics and gynaecology of the British
Commonwealth, 77 (11)1037-1040 (1970)
※8
P.C.Molan,American Journal of Clinical Dermatology, 2 (2), 13-19 (2001)
※9
I.M.Paul,Archives of Pediatrics & Adolescent Medicine, 161 (12), 1140-1146 (2007)

ページトップ