“蜂の子”とは

古来より貴重なたんぱく源として食されてきた“蜂の子”。
ここでは、最新の科学的研究により明らかになってきた
蜂の子の力をわかりやすく解説します。

“蜂の子”とは

蜂の子の基礎情報

蜂の子の種類

“蜂の子”とは、その名の通り、蜂の子ども、つまり蜂の幼虫や蛹のことです。ミツバチだけではなく、スズメバチ、クロスズメバチ、アシナガバチ、クマバチなどの蜂の幼虫や蛹も、すべて“蜂の子”と呼ばれています。特にミツバチに言及すると、女王蜂や働き蜂といったメス蜂は、ローヤルゼリーや蜂蜜など、人の役に立つミツバチ産品の生産者として重要な役割を担うため、主にオス蜂の幼虫が蜂の子として用いられています。
私たち人類との関わりにおいて、蜂の子は蜂蜜と同様に長い歴史を持ちます。では実際に、どのような場面で使われてきたのでしょうか。

伝統食としての蜂の子の歴史

“昆虫を食べる”ことに対して、現代の多くの人々は少し抵抗を感じるかもしれません。しかし昆虫食は世界的に見ても珍しいものではなく、蜂の子も古来よりルーマニア、タイ、メキシコ、エクアドルなど多くの国で貴重なたんぱく質等の栄養源として食されてきました※1, 2, 3, 4。最古の歴史としては、150 万年前に東アフリカで食べられていたという記録があります。現在でも特にタイでは一般的な食材で、一流ホテルのメニューにもなっています※5, 6

日本では 1919 年に、昆虫食に関する大規模な調査が行われ、主にスズメバチの幼虫が、全国的に食用として用いられている実態が明らかとなりました※7。例えば埼玉県では、炭火で焙ったものに醤油や味噌をつけて食べ、岡山県では生のまま、あるいは醤油で付け焼きや煮付けにして食べ、鹿児島県では鍋で煮込んで食べていたそうです。また太平洋戦争中、蜂の子は、北海道から九州に至る各地の昆虫食の中で、最も頻繁に利用されていたとの報告もあります※8。現代の日本でも、特に、長野県、岐阜県、愛知県を中心に、伝統的な郷土料理として愛され続けています※9

薬としての蜂の子の歴史

蜂の子は、古くから薬としても使用されてきました。
例えば、約 2000 年前に著された、中国最古の薬物学書といわれる『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』をひもといてみましょう。『神農本草経』は、さまざまな生薬を薬効と安全性別に3つのランク、すなわち、「上品(じょうほん)(上薬(じょうやく))」(生命を養うもので、体を軽くし、元気を増し、不老長寿の作用があるとされる。無毒で長期間服用できる薬)、「中品(ちゅうほん)(中薬(ちゅうやく))」(病を防ぎ体力を補うが、使い方により毒性が出るので注意して使用する薬)、「下品(げほん)(下薬(げやく))」(病を治すためのもので、毒が多いので長期間の服用は避けるべき薬)に分類しながら解説している書物です。この『神農本草経』における「蜂子(ホウシ)(蜂の子)」の章を見てみると、その評価は最高ランクの「上品」。さらに具体的な効能として、「頭痛を治す」、「衰弱している人や内臓の機能に障害を受けている人の元気を補う」、また、「長期間の服用によって皮膚に光沢が出て顔色がよくなる」、「年齢を重ねても老衰しなくなる」などが挙げられています※10。蜂の子は2000年も昔から、その良さが認められていたのです。

また中国の明時代に、同様に薬になる植物や動物等について博物学的視点を含めてまとめられた本草書『本草綱目(ほんぞうこうもく)』の「虫部(昆虫編)」には、『神農本草経』で挙げられた効能に加えて、心腹痛、黄疸、皮膚の感染症、風疹、便秘、梅毒、婦人科疾患などに効果があると記されています※11
ルーマニアにおいても、蜂の子は、健康食品の一つとされ、アピセラピー(ミツバチ産品を用いた治療)において利用されています。
その他、30 カ国以上の国々における数百名の医師、生化学者、薬剤師の臨床での経験や研究報告に基づいてまとめられた文献では、蜂の子は、病後の回復、くる病、倦怠、神経衰弱、心臓疾患、腎臓疾患、精力減退に関連する治療において効果が高いとされ、これらの改善例が世界中に見られることを示しています※12
このように蜂の子は、さまざまな可能性を秘めた薬として、世界各地で使われてきたのです。

蜂の子の栄養成分

現代の科学研究においては、蜂の子の良さについて、どのような事柄が明らかになっているのでしょうか。まずは栄養学の視点から、蜂の子の食品としての有用性を裏付ける結果が得られています※13
ミツバチの蜂の子の栄養成分を分析したところ、たんぱく質、脂肪、および炭水化物を豊富に含み、加えて、ビタミン、ミネラル、脂肪酸、さらに、ヒトの体内で合成できない等のために、食事から栄養分として取り込まなければならない必須アミノ酸が含まれることが明らかになりました(表)。蜂の子は、さまざまな栄養素を豊富に含む優れた食品と言えるのです。
さらに、蜂の子に豊富に含まれるたんぱく質を摂取しやすいように、酵素によってペプチドやアミノ酸に分解した“酵素分解蜂の子”の研究も進められています。

蜂の子の栄養成分(100gあたり)
主要栄養素(単位:g/100g)
水分 76.8
タンパク質 9.40
炭水化物 8.00
脂質 4.70
繊維質 5.00
エネルギー(単位:kcal/100g)
111.9
ビタミン(単位:mg/100g)
ビタミンC 3.80
ビタミンB群
  ビタミンB1 0.41
  ビタミンB2 0.91
  ナイアシン 3.67
  パントテン酸 1.19
  ピリドキシン 0.12
  ビオチン 0.02
コリン 168.4
ミネラル(単位:mg/100g)
カリウム 269
リン 179
マグネシウム 21.1
カルシウム 13.8
ナトリウム 12.8
亜鉛 1.60
1.29
4.00
アミノ酸類(単位:g/100g)
必須アミノ酸  
  ロイシン 0.66
  リジン 0.58
  バリン 0.49
  イソロイシン 0.43
  フェニルアラニン 0.33
  トレオニン 0.31
  ヒスチジン 0.22
  メチオニン 0.20
  トリプトファン 0.09
タウリン 0.031
グルタミン酸 1.29
アスパラギン酸 0.76
プロリン 0.57
アラニン 0.45
グリシン 0.41
チロシン 0.41
アルギニン 0.40
セリン 0.33
シスチン 0.20
脂肪酸
オレイン酸 1.82
パルミチン酸 1.47
ステアリン酸 0.43
ミリスチン酸 0.12
リノレン酸 0.04
リノール酸 0.03
パルミトレイン酸 0.02
ラウリン酸 0.02

※ Finkeらのグラフ※13より改変

科学的に明らかになってきた蜂の子の効能

近年、最新の科学研究によって、蜂の子のさまざまな作用も明らかになっています。
たとえば、蜂の子に最も期待される効能である“耳鳴り”や“耳のきこえ”への作用。岐阜大学医学部附属病院 青木光広 臨床准教授のグループは、耳鳴りを伴う難聴患者を対象としたヒト試験を行い、“酵素分解蜂の子”を長期間摂取することによって、耳鳴りによる不安や憂鬱感といった抑うつ症状および聴こえにくさが改善されることを明らかにしました※14
また、他の研究グループが行ったヒト試験においても、試験に参加した人の約7割が、蜂の子粉末の摂取による耳鳴りの改善を実感したと報告されています※15

その他、20~30代の女性を対象とした研究では、蜂の子配合食品の摂取試験によって、蜂の子による肌の張りや弾力を改善する効果が示されています※16

蜂の子は、蜂蜜やローヤルゼリー、プロポリスといったミツバチ産品に比べると、馴染みが薄いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、長い間、世界中で愛された歴史があり、また、さまざまな可能性を秘めた食品です。今後も研究の発展に伴ってさらに活用の幅が広がり、人々の健康や美容に役立てられていくことでしょう。

蜂の子は、蜂蜜やローヤルゼリー、プロポリスといったミツバチ産品に比べると、馴染みが薄いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、長い間、世界中で愛された歴史があり、また、さまざまな可能性を秘めた食品です。今後も研究の発展に伴ってさらに活用の幅が広がり、人々の健康や美容に役立てられていくことでしょう。

参考文献
※1
三橋淳, 虫を食べる人びと, 平凡社 (1997)
※2
松香光夫ら, アジアの昆虫資源, 農林統計協会 (1998)
※3
Ramos-Elorduy et al., J Food Compos Anal, 10 (2), 142 (1997)
※4
Onore G, Ecol Food Nutr, 36 (2-4), 277 (1997)
※5
Chen P, et al., Amer Entmol, 44 (1), 24 (1998)
※6
渡辺弘之, タイの食用昆虫記, 文教出版 (2003)
※7
三宅恒方, 農事試験場特別報告, 31, 1 (1919)
※8
野村健一, 文化と昆虫, 日本出版社 (1946)
※9
松浦誠, 三重大学生物資源学部紀要, 22, 89 (1999)
※10
浜田善利・小曽戸丈夫, 意釈神農本草経 増補第3版, 築地書館 (1993)
※11
李時珍(木村康一ら、新注校定), 新注校定 国訳本草綱目 第10冊, 春陽堂書店 (1976)
※12
Stangaciu S, ミツバチ科学, 23 (3), 97 (2002)
※13
Finke M, Ecol Food Nutr, 44 (4), 257 (2005)
※14
Aoki M et al., Ear Hear, 2011 Oct 3. [Epub ahead of print]
※15
三浦於菟, 日本東方医学会抄録集, 25, 31 (2008)
※16
高畑宗幸, 第二回岐阜薬科大学高次機能性食品(蜂産品)研究講演会 (2008)

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