研究成果のご紹介

蜂の子成分によるメニエール病に対する治療効果の臨床的検証

岐阜大学医学部附属病院 青木 光広(2009年度採択)

岐阜大学医学部附属病院の青木光広臨床准教授らの研究グループは、“酵素分解蜂の子”(蜂の子のタンパク質をペプチドやアミノ酸の状態にまで分解したもの)を使用して、蜂の子による耳鳴り改善効果と聴力の回復効果を調べた。

試験ではまず、耳鳴りを伴う難聴患者60名を2グループに分け、一方には酵素分解蜂の子(720 mg/4カプセル/日)を、もう一方には酵素分解蜂の子を含まない偽薬を、どちらを飲んでいるか分からない状態で12週間摂取させた。そして、問診、聴力検査、血液検査を行い、試験食の摂取前後の変化や、酵素分解蜂の子グループと偽薬グループの違いを調べることで、酵素分解蜂の子の効果を評価した。

聴力検査とは、どのくらい小さな音まで聴こえるかを調べる検査で、今回の研究で用いたのは、健康診断で一般的に行われる“純音聴力検査”である。被験者は左右の耳に順番にヘッドホンを当て、オージオメータという器械で出された音が聴き取れた時にボタンを押して、その音が聴こえたことを知らせる。オージオメータは125〜8,000ヘルツの周波数でさまざまな大きさの音を出すことができる。

まず、問診にて耳鳴に関する自覚症状を尋ねたところ、酵素分解蜂の子グループでのみ、“耳鳴から逃れられないかのように感じる”、“全く耳鳴を制御できないと感じる”、“耳鳴のせいで憂鬱になる”といった抑うつ感に関する自覚症状が、摂取前よりも軽くなっていた。このことから酵素分解蜂の子の摂取は、耳鳴に伴う不安や苦痛を和らげることが分かった。

さらに聴力検査の結果、酵素分解蜂の子グループでは、試験食の摂取前と比べて摂取後に、より聴こえやすい方の耳(良聴耳)で、2キロヘルツおよび4キロヘルツにおける聴力の回復がみられた(図)。

一方、偽薬グループでは、より聴きづらい方の耳(難聴耳)で2キロヘルツにおける聴力レベルが低下し、良聴耳でも低音域における聴力レベルが低下した。偽薬は本来、人に対してどのような効果も発揮せず、悪影響も与えないものであるため、偽薬グループの結果は、効果的な対策をせずに耳鳴りを放置しておくと、聴力が低下してしまうことを表している。このことから、酵素分解蜂の子には時間経過による聴力の低下を予防し、さらに回復させる効果があることが明らかとなった。特に2〜4キロヘルツは、“か”“さ”“た”などの子音に当たる周波数であるため、酵素分解蜂の子は、この音域を聴き取りやすくすることによって、日常会話をスムーズにすることが期待できる。

最後に、血液検査の結果、酵素分解蜂の子グループでは、試験食の摂取後に血中のコルチゾールの値が低下していることが分かった。一方、偽薬グループでは、コルチゾールの値に科学的に意味のある変化は見られなかった。今回の試験で、酵素分解蜂の子の摂取によって聴力が改善した背景には、こうしたコルチゾールの低下も影響していると考えられる。さらに、酵素分解蜂の子はコルチゾールを低下させることで、加齢とともに進行する難聴に対しても予防的な効果を発揮する可能性がある。

今回の研究によって、酵素分解蜂の子は、ストレスホルモンの活動を整えて耳鳴に伴う不安や苦痛を和らげるとともに、聴力を回復させる働きを持つ可能性があることが分かった。今回の摂取期間は12週間であったが、さらに長期間摂取し続けることによって、より高い回復効果が見られる可能性がある。耳鳴りには危険な病気が潜んでいることもあるため、まずは医師の診察を受けることが重要であることは言うまでもないが、酵素分解蜂の子が、耳鳴や難聴に悩む人の生活の質の改善に役立つことも期待できる。

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