研究成果のご紹介

運動時の酸化ストレスに対する蜂蜜の緩和作用

武庫川女子大学 生活環境学部 今村 友美(2009年度採択)

体脂肪を減少させ、生活習慣病のリスクを低減させることから、健康維持には運動が欠かせない。しかし、過度な運動によって酸素消費量が高まると、活性酸素が増大する。活性酸素は体内で生じる様々な生理反応において非常に重要な役割を担っているものの、過剰に発生すると酸化作用により生体に害(酸化ストレス)を及ぼす可能性がある。そのため、近年、体内に備わっている活性酸素を除去する働きと、これを高める食品への関心が高まっている。

武庫川女子大学生活環境学部の今村友美氏らの研究グループは、主に肝臓で合成されるグルタチオンに注目し、運動によって高まる体内の酸化ストレスに対して蜂蜜がどのような影響を与えるかを検討した。グルタチオンは3つのアミノ酸が結合したペプチドで、還元型グルタチオン(GSH)または酸化型グルタチオン(GSSG)として存在し、還元型から酸化型へと変換されることで体内の活性酸素を除去することが知られている。

試験では、運動モデルと非運動モデル(コントロール非運動グループ)を用いた。さらに運動モデルは、アカシア蜂蜜(15%蜂蜜溶液)を摂取するグループ(蜂蜜グループ)、15%蜂蜜溶液と同等の糖分を含むショ糖溶液を摂取するグループ(ショ糖グループ)、栄養分を含まない水道水を摂取するグループ(コントロール運動グループ)に分けた(n = 6)。蜂蜜溶液、ショ糖溶液及び水は自由摂取とし、運動モデルは、摂取開始から16時間後にランニング運動器具を用いて、分速29mの速度で60分間走らせた。

試験終了後、各グループにおけるグルタチオンの量を測定し、酸化型グルタチオン(GSSG)に対する還元型グルタチオン(GSH)の比(GSH/GSSG)を算出した。グルタチオンは、通常、還元型(GSH)で体内に存在しているが、酸化ストレスが高まるほど、還元型グルタチオンよりも酸化型グルタチオン(GSSG)のほうが多くなり、GSH/GSSG比は小さくなる。比を算出した結果、コントロール非運動グループよりもコントロール運動グループの方がGSH/GSSGが低下していることが示された。この事実は運動によって還元型グルタチオンよりも酸化型グルタチオンの量が多くなったこと、つまり、体内の酸化ストレスが高まったことを意味している。一方、蜂蜜及びショ糖グループの結果を見ると、両グループともにGSH/GSSGがコントロール非運動グループと同じレベルに維持され、運動による低下が抑えられていた(図)。同時に、ショ糖グループよりも蜂蜜グループのほうが、摂取量が少なかったにもかかわらず、運動時の持久力低下に影響すると言われる血中グルコース濃度の低下を抑えたことも明らかとなった。

以上の結果から、蜂蜜及びショ糖には、運動に伴って生じる酸化ストレスを緩和する作用が期待できることがわかった。さらに、蜂蜜は運動時に補給するエネルギー源として、より優れていると考えられる。

運動による酸化ストレスに対する蜂蜜、ショ糖摂取の影響

参考文献

  • 今村ら, Jpn J Health Fit Nutr, 15(1), 1-8 (2010)
    今村ら, 日本食品化学学会誌, 18(2), 77-82 (2011)

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