メリンジョはアディポネクチンを活性化し肥満や高血糖を改善する
〜遺伝子型による個別化予防の実現に期待〜
熊本大学大学院 生命科学研究部 鬼木 健太郎 (2016年度採択)
生活習慣病の改善に有用なメリンジョ種子抽出物
メリンジョはインドネシアに自生する裸子植物である。その種は古くから食され、レスベラトロールをはじめとした多くのポリフェノールが含まれている。メリンジョの種子抽出物は、インスリン抵抗性の改善、血中の尿酸の抑制、血管老化の阻止といった作用を持つことが報告されている。しかし、メリンジョが健康増進作用を発揮するメカニズムは明らかではなかった。
肥満や糖尿病を改善する善玉物質=アディポネクチン
そこで熊本大学大学院の鬼木氏らが注目したのがアディポネクチンである。アディポネクチンとは脂肪細胞から分泌されるタンパク質の一つであり、インスリン抵抗性の改善や抗炎症といった作用を持つ。また、肥満や糖尿病の患者の血液中では、活性化したアディポネクチンが減少していることが報告されている。
アディポネクチンの活性化には、酸化還元酵素様タンパク質(DsbA-L)が関わっている。DsbA-Lの遺伝子型のうちG/G型は発現量が高く、G/T型とT/T型は発現量が低いことが報告されている。鬼木氏らは、DsbA-Lの遺伝子型の違いがアディポネクチンの活性化に影響を与える可能性を示している。
このたびの研究にて鬼木氏らは、メリンジョ種子抽出物がDsbA-Lの働きを高めるか、アディポネクチンの活性化を促すか、さらに、肥満や糖尿病に対して改善作用を発揮するかを明らかにするための検証を行った。
メリンジョ種子抽出物はアディポネクチンを活性化する
鬼木氏らは、メリンジョ種子抽出物がアディポネクチンの活性作用を持つか評価するため、成人男性42名を3グループに分け、それぞれにプラセボ、メリンジョ種子抽出物(1日あたり150 mg)、メリンジョ種子抽出物(1日あたり300 mg)を14日間摂取してもらった。その結果、メリンジョ種子抽出物1日あたり300 mgの用量で摂取したグループで、活性化アディポネクチンが著しく増加した。
さらに、G/G型の遺伝子を保有している者では活性化アディポネクチンの有意な増加は見られなかった一方で、DsbA-Lの発現量が低いG/TまたはT/T遺伝子型を保有している者では、有意に増加していた(図)。このことから、メリンジョによるアディポネクチンの活性化の程度は、G/TまたはT/T遺伝子型を保有している者において大きいことが示された。
肥満や高血糖を改善するメリンジョ種子抽出物
続いて鬼木氏らは、DsbA-Lや活性アディポネクチンの量について、肥満を原因とした糖尿病のモデルを用いて調査した。その結果、メリンジョ種子抽出物を摂取した糖尿病モデルでは、摂取しなかった糖尿病モデルよりも体重、空腹時血糖値、皮下脂肪量が低く、DsbA-Lや活性化アディポネクチンが多かった。このことから、メリンジョはアディポネクチンを活性化することで、脂肪の蓄積や血糖値の上昇を抑えることが示された。
本研究の成果により、メリンジョ種子抽出物の摂取は肥満による高血糖の予防策として有用であり、さらには遺伝子型にもとづいた個別化予防に貢献する可能性が示唆された。