研究成果のご紹介

コンゴ人における真菌性皮膚炎への蜂蜜およびプロポリスの軽減効果

高知大学 医学部 ンガツ・ランドゥ・ロジャー(2010年度採択)

長年、アフリカ中央部に位置するコンゴで医師として子供の皮膚疾患の治療に携わってきた、高知大学医学部のンガツ・ランドゥ・ロジャー氏らの研究グループは、プロポリスと蜂蜜が、コンゴの子供に発症した真菌性皮膚炎(頭部白癬、癜風:でんぷう)を改善する効果を示すかどうか研究を行った。

試験では、真菌性皮膚炎を持つ子供242人をランダムに5グループに分け、各々の患部に、50 mg/mlブラジル産プロポリス抽出物(以下、50 mgプロポリス)、100 mg/mlブラジル産プロポリス抽出物(100 mgプロポリス)、100%アカシア蜂蜜(蜂蜜)、2%ミコナゾール(ミコナゾール)、または、ワセリンクリームのいずれかを28日間塗布し、真菌性皮膚炎の症状が改善されるか検討した。ミコナゾールは真菌性皮膚炎に対する治療効果を発揮し、ワセリンクリームは症状にまったく影響を与えないことが前もって分かっているため、それらの作用と比較することによって、プロポリスと蜂蜜の効果がどの程度であるかを測ることができる。

診察は塗布前、塗布10日目、14日目、21日目および28日目に行い、皮膚炎の主症状である、痒み、紅斑(赤み)、落屑(表皮の剥がれ)等の変化を追跡した。試験期間中54人が参加を中断したため、最終的に188人の結果で評価を行った。

痒みに対する改善効果の結果を図に示す。

ワセリンクリームを塗布したグループ以外の、50 mgプロポリス、100 mgプロポリス、および蜂蜜を塗布したグループでは、日を追うごとに痒みの程度が軽減した。その効果は、ミコナゾールを塗布したグループと同じ程度であった。

紅斑および落屑に対しても、痒みへの効果と同様に50 mgプロポリス、100 mgプロポリス、および蜂蜜をそれぞれ塗布したグループで、ミコナゾールを塗布したグループと同程度の症状の改善が見られた。
以上の結果から、ブラジル産プロポリスおよびアカシア蜂蜜には、真菌性皮膚炎を改善する効果があることが分かった。また、試験期間中、ブラジル産プロポリスやアカシア蜂蜜による副作用は認められず、高い安全性も確認された。

これまで、プロポリスや蜂蜜の抗真菌作用、抗炎症作用は、試験管内試験等の成果として数多く報告されていた。しかし今回は、ンガツ氏らが実施した科学的な信頼性の高いヒト試験により、プロポリスと蜂蜜を塗布することで、副作用なく、ヒトの真菌性皮膚炎の症状が改善することが明らかになった。治りにくい真菌性皮膚炎に対して安心して使うことができるという、ミツバチ産品の新たな可能性が示されたと言える。高価な薬が一般的ではないコンゴ民主共和国で、国民の生活の質を高めることが期待される。

参考文献

  • Ngatu NR et al., Eur J Integr Med, 3(4), e281-e287 (2011)
    Ngatu NR et al., J Altern Complement Med, 18(1), 8-9 (2012)

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