プロポリスと関節リウマチ@
〜ブラジル産プロポリスは関節リウマチの進行を抑える〜
千葉科学大学 薬学部 岡本 能弘(2008年度採択)
関節リウマチとは、免疫の異常により関節に腫れや痛み、こわばりなどの炎症が生じる病気である。進行すると痛みが全身に広がり、最終的に関節の変形や機能障害が起きるため、患者の生活の質は大幅に損なわれる。さらに、日本における関節リウマチの患者数は、平成20年に約30万人と報告されており、人口の高齢化に伴って増加傾向にある上に、働き盛りの30〜50代で発病するケースも多く認められる。したがって、関節リウマチの克服は個人のレベルにとどまらず、社会全体にとっても重要な課題であると言える。しかし現在のところ完治させる方法は無く、より効果的な治療法の開発が望まれている。
そこで千葉科学大学薬学部・岡本能弘准教授らの研究グループは、関節リウマチに対するブラジル産プロポリスの影響を評価した。プロポリスは抗炎症活性を有することから関節リウマチの炎症症状を改善する作用があると考えられてきたが、科学的な検証は行なわれていなかった。
岡本准教授らは、関節炎モデルを3グループに分け(n =5)、それぞれに、通常食、あるいは、通常食にブラジル産プロポリスのエタノール抽出物(プロポリスエキス)を6.7 mg/gまたは20 mg/gの割合で混ぜたものを、試験期間中、自由に摂取させた。そして、摂取開始以降39日目までの症状を観察。「関節炎スコア」として重症度を記録した。その結果、プロポリスエキスを摂取したグループでは、プロポリスエキスを摂取しなかったグループよりも、試験期間中の関節炎スコアが一貫して低いことが明らかとなった。
さらに岡本准教授らは、プロポリスによる関節リウマチ進行抑制のメカニズムを調べるため、免疫に関わる細胞を多数有する脾臓に注目し、脾臓細胞におけるサイトカインの産生量を測定した。サイトカインとは細胞間の情報伝達に関わるタンパク質で、リウマチを起こしている関節では炎症反応を促進する「炎症性サイトカイン」が異常に多く産生されていることが知られている。測定の結果、プロポリスエキスを摂取したグループでは、炎症性サイトカインの一種である「インターロイキン17」の産生量の低下が見られた。
以上の研究結果から、ブラジル産プロポリスの日常的な摂取によって、関節リウマチの炎症症状が軽減され、進行が抑制される可能性が明らかとなった。この作用は、ブラジル産プロポリスが、免疫細胞のインターロイキン17産生を抑制した結果として発揮されるものと考えられる。