プロポリスと関節リウマチA
〜ブラジル産プロポリスが関節リウマチの進行を抑える仕組み〜
千葉科学大学 薬学部 岡本 能弘(2008年度採択)
千葉科学大学薬学部・岡本能弘准教授らの研究グループは、これまでに、ブラジル産プロポリスの日常的な摂取によって関節リウマチの進行が抑えられる可能性があること、そしてその作用には炎症性サイトカインの一種であるインターロイキン17(IL-17)の産生抑制が関わっていることを明らかにした(詳しくは、「プロポリスと関節リウマチ@ 〜ブラジル産プロポリスは関節リウマチの進行を抑える〜」参照)。そこで岡本准教授らは、試験管内試験を行ない、ブラジル産プロポリスによる関節リウマチ進行抑制のメカニズムをさらに詳しく解析した。
関節リウマチの進行にはさまざまな因子が関わっており複雑であるため、まず初めに図を使って説明する。
IL-17は、白血球の一種であるIL-17産生ヘルパーT細胞(Th17細胞)から産生される。Th17細胞は、ナイーブヘルパーT細胞(抗原刺激を受けていない成熟ヘルパーT細胞)が分化して出来た細胞である。この分化の過程には2つの段階がある。最初の段階では、ナイーブヘルパーT細胞が抗CD3抗原と抗CD28抗原により活性化し、次の段階で、細胞の分化や増殖を促すタンパク質のひとつであるTGF-βと、免疫を調節するタンパク質の一種であるIL-6の働きによりTh17細胞へ分化する。そして、これらの過程で特に重要だと考えられている機構は、IL-6の刺激による、細胞内のSTAT3タンパク質の活性化(リン酸化)である。
まず岡本准教授らは、ナイーブヘルパーT細胞からTh17細胞への分化の過程に対するブラジル産プロポリスの影響を調べるため、ナイーブヘルパーT細胞に、抗CD3抗原、抗CD28抗原、IL-6およびTGF-βをそれぞれ一定の濃度で加え、さらにブラジル産プロポリスのエタノール抽出物(プロポリスエキス)を12 μg/ml または 48 μg/mlの濃度で添加して4日間培養。IL-17の産生量と、ヘルパーT細胞の目印となる細胞表面のCD4タンパク質を指標に、ナイーブヘルパーT細胞の集団におけるTh17細胞の割合を測定した。その結果、プロポリスエキスの濃度が高まるにしたがって、Th17細胞の割合が減少することが示された。
さらに、細胞内のメカニズムに対するブラジル産プロポリスの影響を調べるため、STAT3タンパク質の活性化(リン酸化)レベルを解析したところ、上記の試験と同様に、プロポリスエキスの濃度が高まるにしたがってSTAT3の活性化レベルが低下する傾向が認められた。
以上の結果から、ブラジル産プロポリスが、IL-6によるSTAT3タンパク質の活性化を阻害し、ナイーブヘルパーT細胞からTh17細胞への分化を抑えることが明らかとなった。その結果、IL-17の産生量が低下して関節の炎症が軽減、関節リウマチの進行が抑制されると考えられる。