研究成果のご紹介

ブラジル産プロポリスがインスリン抵抗性を改善する仕組みとは?

京都府立医科大学大学院 医学研究科 丸中 良典(2011年度採択)

国内の糖尿病患者の約 9 割を占める2 型糖尿病は、生活習慣の乱れにより、健康な状態から境界領域を経て徐々に進行する。この境界領域では、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが効きにくい「インスリン抵抗性」という状態になっている。インスリン抵抗性が進行すると、血糖値やインスリン値が上昇して糖尿病を発症するだけでなく、血圧が上昇して脳梗塞や心筋梗塞といった動脈硬化性疾患の発症につながってしまう。

そこで京都府立医科大学大学院・丸中良典教授らの研究グループは、インスリン抵抗性に対するブラジル産プロポリスの影響を確認するとともに、インスリン抵抗性改善作用に関わるメカニズムの解明を試みた。注目したのは、糖尿病患者の体液、すなわち、血液、間質液(細胞どうしの間を満たしている液)、尿が酸性に偏っているという事実である。丸中教授らは、体液の酸性化がインスリン抵抗性の発症や進行に関与しており、酸性化の抑制によってインスリン抵抗性が改善されるとの仮説を立てた。

試験ではまず、2型糖尿病モデルを3グループに分け(n = 6)、それぞれに、通常食、あるいは通常食にブラジル産プロポリスのエタノール抽出物を0.1%または0.5%の割合で混ぜたものを、試験期間中、自由に摂取させた。そして摂取開始から8週間後に、随時血糖値、血中インスリン値、収縮期血圧を測定するとともに、間質液の酸性化状態を、pHを指標に評価した。

その結果、プロポリスを摂取したグループでは、プロポリスを摂取しなかったグループよりも、随時血糖値、血中インスリン値、および収縮期血圧が低いことが明らかとなった。さらに、プロポリスを摂取しなかったグループの間質液が、正常値(pH7.4)以下の高い酸性度だったのに対し、プロポリスを摂取したグループの間質液では、酸性度が、正常値に近い値にまで抑えられていたことが示された(図)。

腹水および肝臓間質液のpHはプロポリスを与えたラットの方が高く、酸性化を抑えていることが示された。

以上の結果から、ブラジル産プロポリスにはインスリン抵抗性を改善する作用があること、そしてその作用には間質液の酸性化抑制が関与している可能性があることが示唆された。生活習慣を見直すとともにブラジル産プロポリスを取り入れることで、インスリン抵抗性がより効果的に予防・改善されると期待できる。ブラジル産プロポリスの日常的な摂取による糖尿病の予防について、臨床での応用に向けたさらなる研究が望まれる。

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