プロポリス吸入による気管支喘息の軽減効果
高知大学 医学部 弘田 量二(2008年度採択)
喘息は気管支がけいれんを起こして狭くなり、気道抵抗(空気の通りにくさ)を引き起こす呼吸器疾患である。ダニやディーゼル排ガスなどのアレルゲンに対して気管支が過敏に反応し、収縮することが発作の主原因となっている。喘息は身体活動の妨げやストレスの原因となり、生活の質を下げる疾患であり、2012年には約13万人の喘息患者が治療を受けたとの報告がある。一般的な治療法としてステロイド剤の長期服用が用いられているが、骨粗鬆症や感染症の誘発など副作用の可能性があり、近年では従来の薬に代わる治療法の研究が進められている。
高知大学医学部の弘田量二助教らの研究グループは、抗炎症作用や抗アレルギー作用が報告されているブラジル産プロポリスに、気管支喘息の発症予防効果および症状軽減効果があるか検討した。
試験では、気管支喘息モデルを2グループに分け(n = 10)、1つ目のグループには60%エタノールにて希釈したブラジル産プロポリスエキス(固形分含有量10%w/w)を、ネブライザーを用いて吸入させ(プロポリスグループ)、2つ目のグループにはプロポリスの代わりに60%エタノールを吸入させた(喘息グループ)。さらに、通常モデルにエタノールを吸入させた(コントロールグループ)。
弘田助教らはプロポリスエキスまたは60%エタノールを、試験期間である31日間で合計10回(試験開始から1, 2, 7, 8, 14, 15, 21, 22, 28, 29日目に)、20分間吸入させた(0.8 ml/min)。そして31日目に、アセチルコリンによる気管支収縮を測定した他、喘息を引き起こすメカニズムに関わるサイトカイン(IL-5, IL-13)量と好酸球数を測定した。アレルギーにおいて、IL-5は炎症の悪化、IL-13は喘息発作の悪化に影響を及ぼす。また白血球の一種である好酸球は、アレルギーにおいて殺菌性タンパク質を分泌し周辺細胞にダメージを与えることで症状を悪化させる。
結果、喘息グループではコントロールグループと比較して、アセチルコリン感受性の上昇(図)とサイトカイン量・好酸球数の増加が見られ、喘息症状の亢進が確認された。
プロポリスグループでは、喘息グループと比較してアセチルコリン感受性が低下し(図)、サイトカイン測定ではIL-5とIL-13が低下し、さらに好酸球数の増加も抑制された。以上の3点からブラジル産プロポリスは、アセチルコリン感受性を軽減することで気管支収縮による喘息の発作を抑制し、また血中サイトカインの低減や好酸球数の増加抑制によって喘息悪化を防ぐことが示された。
以上の研究結果から、喘息の予防や軽減において、ブラジル産プロポリスが有用であることが期待できる。臨床現場での応用に向けて、さらなる研究が求められる。