ブラジル産プロポリスの継続摂取で認知症予防
〜認知症の危険因子“ホモシステイン”に注目〜
鹿児島大学 農学部 叶内 宏明(2010年度採択)
超高齢社会の到来によって、認知症の患者数が急増している。厚生労働省の推計によると、2012年現在で65歳以上の認知症患者は約462万人に上り、今後もさらに増加すると予測されている。認知症は患者本人の生活の質を下げるだけではなく、介護する家族にとっても大きな負担となるが、完治が難しい疾患であるため、認知症の予防、もしくは発症後の進行を緩やかにすることが、健康長寿を目指す上で重要な課題となる。
そこで、鹿児島大学農学部の叶内宏明准教授らの研究グループは、抗酸化作用をはじめ人の健康に役立つさまざまな活性を持つブラジル産プロポリスが、認知機能の低下を予防するか調べた。
叶内准教授らが注目したのは、認知症の危険因子のひとつとされている“ホモシステイン”である。ホモシステインは、必須アミノ酸の一種であるメチオニンが体内で代謝されるときにできる物質で、血中のホモシステイン濃度が高まると、神経細胞が傷つけられたり、動脈硬化が進行して脳の血管が詰まったりすることで、認知症が引き起こされると考えられている。
叶内准教授らは、血中のホモシステイン濃度が高い高ホモシステイン血症モデルに、普通食、または、普通食にブラジル産プロポリスのエタノールエキスを0.1%あるいは0.5%の割合で配合したプロポリス配合食を、10ヶ月間摂取させた。比較対照として、プロポリスを含まない普通食を通常モデルに同じように摂取させ、摂取期間後に各モデルの認知機能を測定した(n=10)。その結果、普通食を摂取した高ホモシステイン血症モデルの認知機能が通常モデルよりも低くなったのに対して、0.5%プロポリス配合食を摂取したホモシステイン血症モデルの認知機能は、普通食を摂取した高ホモシステイン血症モデルよりも高く、通常モデルと同程度であることが示された(図)。このことから、ホモシステインによって引き起こされる認知機能の低下が、ブラジル産プロポリスの継続的な摂取によって抑えられることが分かった。
さらに、老化を原因とした認知機能の低下もブラジル産プロポリスの摂取によって予防されることが、叶内准教授らの研究によって示された。このとき、アルツハイマー型認知症の原因といわれる、脳への不溶性アミロイド蛋白質の蓄積が抑えられていることも分かった。
今回の研究により、ブラジル産プロポリスを継続して摂取することで、高ホモシステイン血症や老化を原因とした認知機能の低下が予防される可能性が示された。今後、臨床現場での応用を目指した研究の実施が期待される。