歯周病により引き起こされるメタボリックシンドロームに対するプロポリスの予防効果
新潟大学大学院 歯学総合研究科 山崎 和久(2013年度採択)
歯周病は、歯と歯肉の隙間である歯周ポケットから侵入した細菌が、歯肉に炎症を引き起こす病気である。厚生労働省の平成23年歯科疾患実態調査報告によると、歯周病の有病率は20代で約2割、30〜50代で約2〜4割、60代で約5〜6割と、年代が上がるにつれて高くなる。歯周病の病状は細菌性因子、宿主因子(全身状態や免疫機能)、環境因子(喫煙の有無や栄養状態)によって決まる。さらに、例えば高脂肪食の摂取により歯周病が悪化するなどの報告もあり、日常的に摂取可能な食品による歯周病の予防には意義がある。
また歯周病は、動脈硬化や糖尿病などメタボリックシンドロームに関連する疾患を引き起こすことも知られている。歯周炎とメタボリックシンドロームとの関連については多くの報告があるが、メカニズムの詳細についてはまだ不明な点も多い。
そこで山崎氏らは、歯周病によって引き起こされる脂質代謝異常に対するプロポリスの影響を検討した。
試験では、歯周病モデルにブラジル産プロポリスを体重1 kgあたり200 mgの用量で毎日1回摂取させ、開始から5週間後の肝臓組織について解析を行った。その結果、歯周病モデルでは肝臓組織における脂肪の蓄積が引き起こされたが、プロポリスを摂取させた歯周病モデルでは、歯周病によって引き起こされる脂肪の蓄積が緩和することが示された(図)。さらに、プロポリスの摂取によって、糖や脂質の生成に関わる遺伝子の発現が抑えられることも明らかとなった。
以上の結果から、ブラジル産プロポリスの摂取は、歯周病によって引き起こされる脂質代謝の異常を抑制することが示唆され、歯周病によって引き起こされるメタボリックシンドロームに対して予防効果を持つと考えられた。今後、臨床への応用を目指した研究が期待される。