ブラジル産プロポリスは毛細血管の減少による筋肉の衰えを防ぐ
毛細血管は血管のうちの9割を占め、体中に栄養を届ける役割を担う。特に末梢組織において、毛細血管は運動など外部からの負荷を受けて新生し、維持されるが、加齢や、癌、糖尿病といった疾患、運動不足による酸化ストレスを原因として減少することが知られている。毛細血管の減少はいわゆる「老化」と言われる様々な症状を体中で示す。例えば、シミやシワといった肌トラブルや、近年では肝機能や脳機能の低下の一因になることも明らかにされており、末梢組織における毛細血管の維持・新生の重要性が注目されている。
血管の維持は筋肉においても非常に重要である。筋肉中の毛細血管が減少すると、十分な栄養を得ることができず、筋肉が衰えて、近年問題視されているサルコペニアの一因にもなりえる。筋肉の衰えを予防するためには、適度な運動を行い、毛細血管を維持することが重要だが、怪我の治療のためのギプス固定など、運動が難しい場合もある。そのような中で、毛細血管の保護・新生を助ける食品があれば、筋肉の衰えのみならず様々なトラブルの予防が期待できるだろう。そこで、神戸大学生命・医学系保健学域の藤野英己氏らの研究グループは、抗酸化作用を持ち、様々な疾患を予防・改善する効果が報告されているブラジル産プロポリスに着目し、筋肉における毛細血管に対して保護効果があるか検討を行った。
藤野氏らは運動の負荷を抑制したモデルを2グループに分け、一方にプロポリスを摂取させた。また、通常の運動を行うことができる通常モデルも同様に2グループに分けた。プロポリスの摂取量は1日あたり体重1 kgに対して1,000 mgとした。そして、2週間が経過した後に、体重あたりの筋肉の重量と、筋肉中の毛細血管の割合を測定した。
その結果、運動負荷の抑制による筋肉量の減少が、プロポリスの摂取によって抑えられることが示唆された。さらに、運動負荷抑制モデルの筋肉における毛細血管の割合は通常モデルよりも低かったが、プロポリスを摂取した運動負荷抑制モデルの筋肉における毛細血管の割合は、プロポリスを摂取しなかった運動負荷抑制モデルよりも高いことが示された(図)。
以上の結果より、ブラジル産プロポリスは毛細血管の減少を抑制することで、筋肉の衰えを緩やかにする可能性が示された。今後は臨床での応用を目指した研究が期待される。