研究成果のご紹介

プロポリスは紫外線による酸化ストレスから肌バリア機能を守る

岐阜薬科大学 生命薬学大講座 五十里 彰 (2017年度採択)

紫外線から肌を守るために重要な肌バリア機能

肌老化の原因の一つに紫外線がある。紫外線は肌のしわやたるみ、しみやそばかすを引き起こすとともに、酸化ストレスを発生させ、肌にダメージを与えることが知られている。肌の一番外側に位置する表皮は、肌バリア機能によって紫外線から肌を守る役割を持つ。つまり、肌バリア機能を保つことは紫外線から肌を守るために重要である。肌バリア機能は、セラミドや脂質によって形成される角質層と、角質層の下の顆粒層(かりゅうそう)の二重構造によって保持されている。顆粒層には、細胞膜に細胞接着分子が集まったタイトジャンクションがあり、細胞同士がタイトジャンクションで接着することにより、バリア機能が保たれている。タイトジャンクションの機能低下により、バリア機能が衰えることが知られている。タイトジャンクションの構成因子の一つにCLDN1というタンパク質があり、肌がストレスを受けると、CLDN1はタイトジャンクションから細胞質内へと移行する。

プロポリスの抗酸化作用による肌バリア機能の保護

抗酸化作用は、皮膚損傷や老化、がんのリスクなどを低減させる重要な働きの一つである。プロポリスにはフラボノイドやフェノール酸が含まれ、強い抗酸化作用を持つことが知られており、ブラジル産プロポリスが、紫外線によるヒトの表皮角化細胞の細胞死を防いだという研究報告がある。さらに、ブラジル産プロポリスが創傷治癒を促進するとの報告もあり、さまざまな肌ダメージに対する保護作用が期待されるが、顆粒層のバリア機能に対する働きについては明らかではなかった。そこで、五十里氏らは、顆粒層のCLDN1に対するブラジル産プロポリスの影響を調べた。

肌バリア機能の低下を防ぐプロポリスの働き

紫外線は、細胞に届くと活性酸素を発生させ、細胞に酸化ストレスを与える。そこで、ヒト表皮由来細胞に紫外線(B波)を照射、または、酸化ストレスとして過酸化水素を添加したところ、コントロールに比べて、タイトジャンクションに局在するCLDN1の発現量が低下し、細胞の透過性が亢進した。細胞透過性の亢進は、タイトジャンクションの働きが弱まり、肌バリア機能が低下したことを示唆している。一方、ブラジル産プロポリスを添加した細胞に、紫外線の照射や過酸化水素の添加を行ったところ、紫外線照射や過酸化水素によって引き起こされた、タイトジャンクションに局在するCLDN1の発現量の低下と細胞透過性の亢進は抑制された。

これらの結果より、紫外線による肌ダメージと、プロポリスによる肌バリア機能の保護のメカニズムは、図で示した通りと考えられる。

紫外線によって肌がダメージを受けると(1)、顆粒層のCLDN1が細胞膜から細胞質内へと移行し(2)、タイトジャンクションが弱まって、肌のバリア機能が低下する(3)。プロポリスはCLDN1の細胞質内への移行を阻止することで、タイトジャンクションの強度を保ち、肌バリア機能の低下を抑えるのである。今後、ブラジル産プロポリスが、紫外線から肌バリア機能を保護する化粧品の開発に役立てられることが期待される。

 

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