研究成果のご紹介

プロポリス成分が炎症性腸疾患につながる免疫細胞の活性を抑える

広島大学大学院 生物圏科学研究科 鈴木 卓弥(2014年度採択)

炎症性腸疾患リスクを適切な食習慣で抑える

炎症性腸疾患は、大腸および小腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍が生じる腸疾患である。炎症性腸疾患の発生率は北米と西ヨーロッパを始め、近年アジア諸国などでも増加している。炎症性腸疾患の発症には食生活などの生活習慣が大きく関わっているとされ、植物に由来する食品成分が、炎症性腸疾患のリスクを軽減する可能性も示唆されている。炎症性腸疾患は完治が難しいとされる病気であり、予防が重要である。

ブラジル産プロポリスに腸の炎症を抑える可能性

プロポリスは植物の芽や樹液、花粉を原料としてミツバチによって作られる樹脂状の物質である。産地によって含有成分が異なり、ブラジル産プロポリスにはアルテピリンCやドルパニンなどの桂皮酸誘導体が多く含まれている。以前の研究では、ブラジル産プロポリスが免疫細胞の一種であるTh1細胞への過剰な分化を抑制することで、腸炎症を軽減する可能性が示されていた(詳しくは「ブラジル産プロポリスが難病の1つである炎症性腸疾患を予防する可能性 」を参照)。しかし、Th1細胞以外の免疫細胞への影響や、炎症の軽減に関与するプロポリス成分は完全には分かっていなかった。
そこで、広島大学大学院・鈴木 卓弥氏の研究チームは、免疫細胞の中でも特にTh17細胞に着目し、ブラジル産プロポリスが腸の炎症を軽減するか、さらに、プロポリスに含まれる桂皮酸誘導体がTh17細胞の分化に関わる経路に影響するかを調べた。Th17細胞は、マクロファージが分泌するサイトカインの一種であるIL-6の働きにより、ナイーブヘルパーT細胞が分化して出来る免疫細胞である。Th17細胞の産生するサイトカイン・IL-17が、腸の保護機能を低下させるとの報告がある。

アルテピリンCが免疫細胞からのサイトカインの産生を抑制

炎症性腸疾患を発症するモデルにプロポリスを9日間摂取させたところ、プロポリスを摂取した群では摂取していない群と比較して腸疾患による症状が改善し、先行研究と同様の結果が得られた。
さらに、プロポリス成分による免疫系の変化を調べたところ、ドルパニンがIL-6の産生を、アルテピリンCがIL-17の産生を抑制することが明らかとなった(図)。

プロポリスの免疫に関するさらなる機能性

今回の研究により、ブラジル産プロポリスがTh1細胞だけではなくTh17細胞などの様々な免疫細胞にも影響を与える可能性があることや、プロポリス成分の中でも桂皮酸誘導体がマクロファージの活性化やTh17細胞の分化を制御することが明らかになった。生活習慣を見直すとともにブラジル産プロポリスを取り入れることで、炎症性腸疾患の症状緩和が期待できる。今後、プロポリスの摂取による炎症性腸疾患の予防に関するメカニズムのさらなる解明が望まれる。

 

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