研究成果のご紹介

ブラジル産プロポリスは筋肉を糖化から守る

京都大学大学院 人間・環境学研究科 江川 達郎(2017年度採択)

老化を促進する糖化ストレス

「糖化」は「酸化」とともに老化の要因の一つとされる現象で、体内の糖がタンパク質と結合することをさす。糖化により引き起こされる糖化ストレスとして、糖化最終産物(AGEs)の蓄積、タンパク質の劣化、炎症物質の生成がある。糖化ストレスは肌のシワやくすみなど外見の衰えや、動脈硬化や骨粗鬆症など内側の衰えをもたらす要因となる。筋肉においても例外ではなく、京都大学大学院の江川達郎氏は、これまでに、培養細胞を用いた試験によって、AGEsが骨格筋の形成と発達を妨げることを示している。また、先行研究では、ポリフェノールがAGEs形成の阻害、AGEs分解の促進、AGEs受容体(RAGE)の拮抗作用の3つの働きにより抗糖化作用を発揮することが示されている。そこで江川氏は、アルテピリンC、p-クマル酸、ケンフェライドなど多くのフェノール化合物が含まれるブラジル産プロポリスも、筋肉において抗糖化作用を発揮する可能性があると考えた。

AGEsの形成と蓄積を抑制するブラジル産プロポリス

江川氏は、糖化ストレスモデルおよび非糖化ストレスモデルにそれぞれ通常食またはプロポリス配合食を20週間与えて、骨格筋に蓄積されたAGEs量、および、AGEs前駆体の除去に関わる酵素であるグリオキサラーゼ1の活性を測った。その結果、糖化ストレスモデルの長趾伸筋では、通常食を摂取したグループよりもプロポリス食を摂取したグループの方が、AGEs量が低く、グリオキサラーゼ1の活性が高かった(図)。つまり、ブラジル産プロポリスは長趾伸筋へのAGEs蓄積を抑制すること、および、AGEs前駆体の除去能を高めてAGEs形成を阻害することが示された。

なお、ヒラメ筋においてはプロポリスの摂取によるAGEs量の変化は見られなかったが、これは筋肉の性質の違いによると江川氏は考えている。すなわち、ヒラメ筋のような遅筋はタンパク質代謝回転が速いためAGEsが蓄積しにくく、長趾伸筋のような速筋は蓄積しやすいためプロポリスの影響も速筋で大きく表れたと考えられる。

筋肉を炎症から守るブラジル産プロポリス

AGEs過多になるとAGE受容体(RAGE)を介した細胞内シグナル伝達が過剰に活性化されて炎症反応を引き起こし、筋線維の損傷や筋肉の衰えにつながる。本研究にて骨格筋における炎症性サイトカインの発現を測定したところ、糖化ストレスモデルの長趾伸筋におけるIL-1βおよびIL-6の発現上昇がブラジル産プロポリス摂取により抑制されていた。この結果は、ブラジル産プロポリスがAGEsによる炎症反応から長趾伸筋を守る効果があることを示す、世界で初めての成果となった。

高齢化社会におけるブラジル産プロポリスの可能性

本研究により、ブラジル産プロポリスは骨格筋において、AGEsの蓄積を抑制すること、AGEs前駆体の除去能を高めること、AGEsによる炎症反応を抑制することで、老化や病気による衰えから骨格筋を守る働きがあることが世界で初めて示された。昨今の高齢化社会で問題視されているフレイル(※1)やサルコペニア(※2)に対し、筋肉の衰えにアプローチするという点でブラジル産プロポリスが役立つことが期待できる。また、糖化は全身で起こる現象のため、ブラジル産プロポリスが筋肉のみならず老化の防止に広く役立つことが期待できる。

※1 フレイル
加齢によって身体機能や認知機能などの低下が見られる状態のこと。健康な状態と介護が必要な状態の中間にあたる段階。

※2 サルコペニア
加齢に伴う筋肉量や筋力の低下のこと。

 

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