研究成果のご紹介

ブラジル産プロポリスは歯周病患者の歯周ポケットを改善する

国立感染症研究所 細菌第一部 中尾 龍馬(2014年度採択)

歯周病は万病の元

歯周病は、口腔細菌の感染等によって歯周組織に炎症が生じる疾患である。中等度から重度になると、歯を支える歯槽骨が溶けて「歯周ポケット」と呼ばれる溝が深くなり、最終的に歯が抜け落ちる。予防や改善の主な方法は、歯磨きや歯科医院でのメンテナンスであるが、重い歯周病を直ちに完治させる方法は現在のところ認められていない。 歯周病は、歯周組織だけではなく、全身に慢性的な炎症を引き起こし、心血管疾患や糖尿病、肺炎、認知症等の発症に広く関与する。このため、歯周病を予防・改善して口腔の健康を良好に保てば、健康寿命を延ばすことができると考えられている。

歯周病菌に対して抗菌作用を発揮するブラジル産プロポリス

ブラジル産プロポリスは、桂皮酸誘導体や有機酸等の多様な成分を含み、抗菌、抗酸化、抗炎症、抗腫瘍といった幅広い活性が報告されている。国立感染症研究所の中尾氏らは先行研究にて、ブラジル産プロポリスが、歯周病の発症と進行に深く関与する細菌(Porphyromonas gingivalis)に対して強い生育阻害活性を示すことを見出し、さらに、プロポリスの含有成分であるアルテピリンC、バッカリン、ウルソール酸が抗菌活性を発揮するメカニズムを明らかにした(詳しくは「ブラジル産プロポリスの歯周病原細菌に対する効果〜抗菌化合物の同定と抗菌機序の解明〜」を参照)。そこで中尾氏らは本研究にて、ブラジル産プロポリスが歯周病患者の症状を改善するか、ランダム化二重盲検プラセボ対照試験にて検証した。

ブラジル産プロポリスの歯周病改善効果を臨床試験で実証

中尾氏らは、中等度から重度の慢性歯周病患者24名をランダムに4群に分け、歯周ポケットに、1%プロポリスエキス軟膏、カレーリーフエキス軟膏、抗菌薬(ミノサイクリン)軟膏、そしてプロポリス等を含まないプラセボ軟膏をそれぞれ投与した。それぞれの軟膏は、基本的な歯周病の治療の期間終了後に、1か月ごとに計3回投与し、初回投与の前と最終回の投与の1か月後に歯肉溝滲出液を採取し、Porphyromonas gingivalisの量や歯周ポケットの深さを測定し、改善スコアを算出した(図)。

プロポリスを投与した患者の半数の歯肉溝滲出液で、Porphyromonas gingivalisが検出されなくなった。さらにプロポリスを投与したグループでは、プラセボグループと比べて、歯周ポケットが浅くなり、スコアの有意な改善が見られた。

その結果、プロポリスを投与した患者の半数の歯肉溝滲出液で、Porphyromonas gingivalisが検出されなくなった。さらにプロポリスを投与したグループでは、プラセボグループと比べて、歯周ポケットが浅くなり、スコアの有意な改善が見られた。

本研究によって、プロポリスが歯周病患者の症状である歯周ポケットの深さを改善することが示された。プロポリスによるPorphyromonas gingivalisの生育抑制が、作用メカニズムのひとつと考えられる。さらにプロポリスが、歯周病が関わる他の疾患を予防することで、健康寿命の延長に役立つ可能性も期待される。

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