研究成果のご紹介

プロポリスは歯のブリーチングによる歯肉炎を緩和する

国立長寿医療研究センター 山田(古川) 匡恵(2018年度採択)

歯のブリーチングは歯肉炎を引き起こす

ブリーチングは、歯を白くしたい若齢者から高齢者に至る幅広い年代に行われている施術である。しかし、ブリーチングには、知覚過敏、歯肉炎、歯の摩耗、歯の詰め物・被せ物の腐食といった一過性の副作用がある。ブリーチングによる歯肉炎の原因は、ブリーチング剤に含まれる過酸化水素であることが分かっている。しかし現在、ブリーチングによる歯肉炎の治療法は確立されていない。

口腔疾患の改善に使用されてきたプロポリス

プロポリスは抗炎症作用、抗酸化作用、抗菌作用を持つことが報告されており、口腔疾患に対しても古くから活用されてきた。近年でもプロポリスは、創傷治癒の促進や洗口、虫歯予防、また、知覚過敏や歯周病、再発性アフタ性口内炎(※)の処置といった、口腔内のさまざまな症状に有効であると報告されている。そこで国立長寿医療研究センターの山田(古川)氏らは、プロポリスがブリーチングによる歯肉炎を緩和する効果があるのではないかと考え、調査した。 

※ 再発性アフタ性口内炎
直径数ミリの潰瘍の再発を繰り返す口内炎

プロポリスは歯肉炎の炎症を抑える

山田(古川)氏らは若齢モデルと高齢モデルを用い、それぞれのモデルを「コントロール群(歯肉炎を発症していないグループ)」「歯肉炎群(歯肉炎を発症しているグループ)」「プロポリス+歯肉炎群(歯肉炎群に2.5%プロポリス軟膏を塗布したグループ)」の3グループに分けた。そして、若齢モデルと高齢モデルにおける3グループそれぞれの炎症範囲を測定した。その結果、両モデルともに「プロポリス+歯肉炎群」では「歯肉炎群」と比べて、炎症範囲が小さくなることが分かった(図)。

両モデルともに「プロポリス+歯肉炎群」では「歯肉炎群」と比べて、炎症範囲が小さくなることが分かった

プロポリスが炎症を抑えるメカニズム

次に山田(古川)氏は、炎症を促進する因子であるIL-1βおよびTNFαと、創傷治癒に寄与する因子であるケラチン1およびケラチン5の発現量を調べた。 その結果、IL-1βとTNFαは、若齢モデルと高齢モデルのいずれにおいても、歯肉炎の発症によって増加し、プロポリスの塗布によって減少した。一方、ケラチン1は、若齢モデルではプロポリスの塗布による変化は見られなかったが、高齢モデルではプロポリスの塗布によって発現レベルが著しく高まった。ケラチン5は、両モデルともに歯肉の炎症によって減少し、プロポリスの塗布によって増加した。以上の結果から、プロポリスは、IL-1βおよびTNFαを減少させることで歯肉炎の炎症を抑え、ケラチンを増加させることで創傷の治癒を促すことが分かった。 

プロポリスは過酸化水素による炎症を抑える 

ブリーチングによる歯肉炎の原因は、ブリーチング剤に含まれる過酸化水素である。そこで、過酸化水素による炎症へのプロポリスの効果を、20週齢(若齢)の男性と60歳(高齢)の女性から採取したヒト歯肉線維芽細胞を用いて調べた。ヒト歯肉線維芽細胞に過酸化水素を添加したところ、炎症を促進する因子であるIL-1βとTNFαが、若齢と高齢のいずれの細胞においても、過酸化水素を添加していない細胞より増加したが、プロポリスの添加で顕著に減少することが示された。このことからプロポリスは、ブリーチングによる歯肉炎の原因となる、過酸化水素によって引き起こされる炎症を抑えることが示された。 

口腔内の炎症の改善が期待されるプロポリス 

本研究から、プロポリスは若齢者のみならず高齢者においても、ブリーチングによる歯肉炎を抑え、治癒を促進する可能性があることが示された。プロポリスは古くから利用されてきた安全性の高い天然物であることからも、今後、歯肉炎のみならず、口腔内の炎症の改善に広く利用されることが期待される。

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