ローヤルゼリーは骨のしなやかさを保つ
〜更年期の骨粗しょう症予防に有効な可能性〜
新潟大学大学院 医歯学総合研究科 加来 賢(2010年度採択)
骨粗しょう症とは、骨の強度が低下して骨折しやすくなる疾患であり、特に、更年期の女性がかかりやすいとされている。その理由は、更年期において急激に減少する女性ホルモンのエストロゲンが、骨の密度を維持する上で重要な役割を果たしているからである。高齢になってからの骨折は寝たきりの原因となり、生活の質の低下に直結するため、更年期における骨粗しょう症の予防は、女性にとって重要な課題といえる。
そこで、新潟大学大学院医歯学総合研究科の加来賢(かくまさる)准教授らの研究グループは、エストロゲンに似た作用を持つローヤルゼリーが骨粗しょう症を予防する可能性があるか調べた。
骨の強度は、骨におけるカルシウムなどのミネラルの濃度(骨密度)と、骨の質(骨質)によって決まる。そのうちの骨質に大きく関わっているのが、骨組織における有機質の90%以上を占めるI型コラーゲンである。I型コラーゲンは骨にしなやかさを与える物質で、コラーゲン分子どうしが“クロスリンク”という分子間架橋結合によって互いに結びついている。そして、I型コラーゲンにおけるクロスリンクの割合は骨質、特に骨のしなやかさに影響を及ぼすことが報告されている。
加来准教授らは、更年期モデルを3グループに分け、「普通食」、「1%未酵素分解ローヤルゼリー配合食」、および「1%酵素分解ローヤルゼリー配合食」を、それぞれ12週間摂取させた。比較対照として、通常モデルに普通食を同じように摂取させ、摂取期間後に、各モデルの骨質をI型コラーゲンに含まれるクロスリンクの割合によって評価した(n=20)。
試験の結果、ローヤルゼリーを含まない普通食を摂取した更年期モデルの骨におけるクロスリンクの割合は、通常モデルよりも低くなった。それに対して、未酵素分解および酵素分解ローヤルゼリー配合食を摂取した更年期モデルにおけるクロスリンクの割合は、普通食を摂取した更年期モデルよりも著しく高く、通常モデルと同程度であることが示された(図)。このことから、更年期に引き起こされる骨質の低下が、ローヤルゼリーの継続的な摂取によって抑えられることが分かった。
さらに、培養細胞を用いた試験によって、未酵素分解ローヤルゼリーが、クロスリンクの生成に関わる遺伝子の発現を高めることが分かった。この機構によって、未酵素分解ローヤルゼリーは更年期モデルの骨質を改善したと考えられる。一方、酵素分解ローヤルゼリーによる骨質改善のメカニズムは、未酵素分解ローヤルゼリーとは異なるものと推察される。
今回の研究により、ローヤルゼリーを継続して摂取することで骨の質が保たれ、更年期に発症する骨粗しょう症の予防につながる可能性が示された。臨床現場での応用を目指した研究の実施が期待される。