“健康寿命”を延ばすローヤルゼリー
クレムゾン大学(アメリカ) ユーチン・ドン(2011年度採択)
日本は世界一の長寿国である。厚生労働省の調査によると、日本人の平均寿命は、2013年現在、男性で80.21歳、女性で86.61歳に達している。一方、健康上の問題がなく、自立した日常生活を送ることができる「健康寿命」は、男性が71.19歳、女性が74.21歳であり、平均寿命との差は約10年にも及ぶ。すなわち日本人の多くは、最晩年を、健康に問題を抱えた状態で過ごしているのである。したがって健康寿命をいかに延ばすかが、「長寿」のみならず「健康長寿」を達成するための課題といえる。
そのような中、抗炎症、抗酸化、抗ガンといった多彩な作用を持つローヤルゼリーが、アンチエイジングのための天然素材として関心を集めており、抗加齢研究のモデル生物として多用されている線虫の寿命を延ばすことが報告されている。しかし、健康寿命の延伸という視点での研究はわずかであり、寿命延長作用を発揮するメカニズムについても不明だった。
そこで、アメリカ・クレムゾン大学のユーチン・ドン博士らの研究グループは、ローヤルゼリー、および、ローヤルゼリーを山田養蜂場独自の技術で分解した酵素分解ローヤルゼリーが寿命を延長するか、また、健康なエイジングの妨げとなる様々なストレスへの耐性を高めるか検証するとともに、これらの作用に関わるメカニズムを解析した。
まずユーチン・ドン博士らは、ローヤルゼリーの寿命延長作用を調べるため、線虫にローヤルゼリーあるいは酵素分解ローヤルゼリーを様々な濃度で加えた。ひとつの濃度につき、線虫を約30匹ずつ培養したプレートを3枚用いた。そして、線虫の数を毎日計測し、それぞれのグループの平均寿命を算出した。その結果、ローヤルゼリーを添加しないグループに比べて、ローヤルゼリーあるいは酵素分解ローヤルゼリーを添加したグループの平均寿命が有意に長いことが分かった。このことから、山田養蜂場独自の酵素分解ローヤルゼリーも寿命延長作用を発揮する可能性が示された。
続いて、ローヤルゼリーの抗ストレス作用を調べるため、線虫に、ローヤルゼリー2 mg/mL、あるいは、酵素分解ローヤルゼリー1 mg/mLを添加した上で、酸化ストレス、紫外線ストレス、熱ストレスのいずれかを加えて、その後の線虫の生存率を算出した。その結果、ローヤルゼリーあるいは酵素分解ローヤルゼリーによって、各々のストレスによる生存率の低下が抑制されることが示された(図:酵素分解ローヤルゼリーの結果を抜粋)。このことから、ローヤルゼリーおよび酵素分解ローヤルゼリーが、線虫のストレス耐性を高めることが示唆された。
最後に、上記の寿命延長および抗ストレス作用に関わるメカニズムを調べたところ、DAF-16やSIR-2.1といったタンパク質を介していることが明らかとなった。これらの因子は、全身のエネルギー代謝などのホメオスタシスに関わるFOXO1やSIRT1としてヒトにも存在しているため、ローヤルゼリーはヒトにおいても、これらの因子を介してアンチエイジング効果を発揮する可能性がある。
今回の研究により、ローヤルゼリーや酵素分解ローヤルゼリーは、単に寿命を延長するのみならず、疾患の原因となる様々なストレスへの耐性を高めることによって、健康なエイジングに役立てられる可能性が示された。ヒトにおけるアンチエイジング効果を明らかにする研究が求められる。