研究成果のご紹介

食によるドライアイ予防を目指して
〜アンチエイジング素材・ローヤルゼリーで発症を防ぐ〜

慶應義塾大学 医学部 今田 敏博(2011年度採択)

ドライアイとは、様々な要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり、眼不快感や視機能異常を伴う多因子疾患である。近年の食生活の変化や、パソコン・スマートフォンなどの視覚情報端末の普及に伴って患者数は増加傾向にあり、2003年現在で2200万人に上ると推定されている。さらに、老化現象のひとつでもあることから、視覚情報端末を扱う人のみならず、誰でも発症する可能性のある疾患といえる。しかし有効な予防方法はなく、治療として涙の成分を一時的に補充する点眼に頼っているのが現状である。

そこで、慶応義塾大学医学部の今田敏博氏らの研究グループは、冷え症の軽減や、肩こりの緩和、筋力低下の予防、皮膚の保湿といった多彩な健康作用を持ち、アンチエイジング素材として注目されているローヤルゼリーにドライアイを予防する作用があるかを、まばたき不足と乾燥によってドライアイを発症するモデル(ドライアイモデル)を用いて調べた。

今田氏らは、ドライアイモデルを5グループに分け、そのうちの4グループに、ローヤルゼリーを1日あたりそれぞれ3, 30, 300, 3000 mg/kgの用量で10日間摂取させた。残りの1グループは、ローヤルゼリーを与えないコントロールグループとした(n=10)。そして、摂取1日目、5日目、8日目、および、最終摂取日の翌日(11日目)に、涙液の分泌量を測定した。

その結果、コントロールグループでは5日目以降の涙液分泌量が1日目の約半分に減少していたのに対し、30 mg/kgより多い量のローヤルゼリーを摂取したグループでは、その減少が抑制されることが明らかとなった。特に、300および3000 mg/kgのグループでは、涙液分泌量が1日目と同程度に維持されていた。

コントロールグループでは5日目以降の涙液分泌量が初日の約半分に減少していたのに対し、30 mg/kgより多い量のローヤルゼリーを摂取したグループでは、その減少が抑制されることが明らかとなった。特に、300および3000 mg/kgのグループでは、涙液分泌量が初日と同程度に維持されていた。

さらに、ローヤルゼリーによる涙液分泌量の維持に関わるメカニズムを調べたところ、ドライアイモデルの涙腺におけるミトコンドリアとアデノシン三リン酸(ATP)の減少が、ローヤルゼリーの摂取によって抑制されることが示唆された。ミトコンドリアは、ATPの合成を介して生命活動に必要なエネルギーを産生する器官であるため、ローヤルゼリーによる涙液分泌機能の維持には、涙腺のミトコンドリアによるエネルギー産生の正常化が関与していると考えられる。

以上の結果から、ローヤルゼリーの摂取によって、まばたき不足と乾燥を原因とした涙液の減少が抑制され、ドライアイの発症が予防される可能性が示された。点眼という対症療法ではなく、食によって、ドライアイを体の内側から予防できる可能性を示したことが、本研究の大きな特徴である。日常生活での利用を目指した研究が期待される。

PAGE TOP