研究成果のご紹介

ローヤルゼリーが放射能汚染食品による内部被ばくを防ぐ可能性

岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 榎本 秀一(2011年度採択)

2011年の原子力発電所の事故以来、放射性物質による食品汚染が大きな問題となり、放射性物質を体内に取り込んだ際の内部被ばくを防ぐ方法の研究が、非常に重要となっている。

ミツバチが産生するローヤルゼリーには、抗菌作用や抗酸化作用など多くの薬理作用がある事が知られており、X線などの体外から受ける放射線によるダメージを低減させるという報告もある。しかし内部被ばくに対する有効性は研究されていないため、岡山大学大学院・榎本秀一教授らのグループは、ローヤルゼリーの予防的な摂取が体内の放射性物質の代謝や排泄に寄与するかどうかを検討した。

榎本教授らはまず、酵素分解ローヤルゼリー(体重1 kgあたり300 mg)を予防的に1週間与えたグループと、与えていないグループにモデルを分けた。そして、原子力発電所事故時に問題となる放射性物質であるセシウム137、ヨウ素131、およびストロンチウム85によって内部被ばくした際の、体内への放射性物質の蓄積量と、尿への排泄量を評価した。榎本教授らは複数の放射性物質を同時かつリアルタイムに画像化できる世界初の装置GREI(Gamma-ray Emission Imaging:多核種同時ガンマ線イメージング)の開発に成功しており、体内に蓄積した放射性物質の位置や量を、GREIを用いて画像でもとらえている。

放射性物質の蓄積を調査した結果、酵素分解ローヤルゼリー摂取モデルでは甲状腺に蓄積したヨウ素131の量が、非摂取モデルの20分の1にまで顕著に減少していた。次に放射性物質の尿中への排泄率を調べた結果、酵素分解ローヤルゼリー摂取モデルではセシウム137の排泄率が、非摂取モデルの約2.5倍に増加していた。同様に、尿中への排泄率はヨウ素131では約3.8倍、ストロンチウム85では約5.9倍も増加しており(図)、この事は、酵素分解ローヤルゼリーが放射性物質の体外への排泄を促進していることを示している。同様にGREIを用いた画像評価でも、酵素分解ローヤルゼリーの摂取による放射性物質の組織への蓄積抑制と、尿中への排泄促進が観察された。

酵素分解ローヤルゼリーが放射性物質の体外への排泄を促進していることを示している

本研究では酵素分解ローヤルゼリーの継続摂取により、3種類の放射性物質の体内蓄積が抑制され、体外への排泄が促進されることが明らかになった。これらの結果から、ローヤルゼリーは放射線内部被ばくからの防護作用を持つ可能性が示唆された。

放射性物質による食品汚染の不安が高まる昨今、簡単に日常生活に取り入れられる方法で内部被ばく対策が出来ることは、非常に望ましい。日頃から予防的に摂取できるローヤルゼリーの、内部被ばく防護剤としての臨床応用を目指した研究が期待されている。

参考文献

  • 赤田ら, 日本栄養・食糧学会誌, 67(5), 237-244 (2014)

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