研究成果のご紹介

ローヤルゼリーは更年期による物忘れやうつ症状等の神経症状を改善する

静岡県立大学大学院 薬学研究院生化学講座 南 彰(2015年度採択)

更年期におけるエストロゲンの急激な欠乏は、ホットフラッシュや骨粗しょう症の他に、物忘れやうつ症状などの神経症状を引き起こし、生活の質を著しく低下させる。これら更年期症状の治療にはホルモン補充療法が広く使用されているが、精神症状や認知機能の低下に対しては十分な効果が見込めないという研究報告があり、また、安全性に関しては卵巣癌発症リスクの増加の可能性について未だ議論が続いている。したがって、健康な生活を送るためには普段から、バランスのとれた食事や適度な運動など、規則正しい生活習慣を心がけ、更年期症状を予防・改善することが重要である。

これまでの研究から、ローヤルゼリーは女性ホルモン(エストロゲン)様の作用を持ち、更年期の女性の疲労感や肩こり、冷え症等を改善することが分かっている。そこで、静岡県立大学大学院の南氏らの研究グループは、ローヤルゼリーが更年期に伴う物忘れやうつ症状等の神経症状を改善する可能性があるかを調べた。

南氏らは、更年期モデルを3グループに分け、「酵素分解ローヤルゼリー」、「エストラジオール(エストロゲンの1種。ホルモン補充療法に用いられる)」、比較対照として「水」を、それぞれ84日間毎日摂取させた(n=9〜13)。摂取67日後と81日後にそれぞれ、記憶能力とうつ傾向を評価した。記憶能力は、更年期モデルに迷路を解かせ、ゴールに到着するまでの時間を1日8回、3日間測定し、その平均値から評価した(ゴールへの到着時間が長い=記憶能力が低い)。また、うつ傾向は、更年期モデルを5分間水中で自由に泳がせ、その間、泳がずに動きを止めていた時間の長さで評価した(動きを止めていた時間が長い=うつ傾向が強い)。

試験の結果、酵素分解ローヤルゼリーを摂取したグループは、水を摂取したグループと比べて、記憶能力の有意な改善が見られた(図A)。うつ傾向についても同じく、酵素分解ローヤルゼリーの摂取による有意な改善が確認された(図B)

ローヤルゼリーは更年期による物忘れやうつ症状等の神経症状を改善する

以上の結果から、ローヤルゼリーの飲用は更年期における物忘れやうつ症状等の神経症状に対し有効であり、生活の質の向上に役立つ可能性が示された。今後は、臨床への応用を目指した研究が期待される。

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