研究成果のご紹介

ローヤルゼリーが褐色脂肪細胞を活性化し代謝を調節することを発見

東海大学 生物学部 寺尾 晶(2015年採択)

肥満は、糖尿病をはじめとした生活習慣病のリスク因子であり、肥満をいかに解消するかが健康寿命の延伸に重要である。肥満の予防には、食事制限による摂取エネルギーの制限や、運動による消費エネルギーの増加などがあげられるが、ライフスタイルの習慣的な変化が求められるため、継続して続けることが難しい。そこで日常の食生活の中で、栄養素や食品成分の機能性により、エネルギー消費量を増加させることで、肥満や肥満に関連する疾患の予防ができるのではないかと期待されている。

生体におけるエネルギー消費組織として、褐色脂肪組織が注目されている。実際にいくつかの食品成分で褐色脂肪細胞の活性化によるエネルギー消費の亢進が報告されている。例えば唐辛子に含まれるカプサイシンは、褐色脂肪細胞の働きを高め、熱産生を促進する。一方でローヤルゼリーは、脂質代謝やインスリン感受性を改善することが報告されており、肥満や肥満に伴う生活習慣病の予防に利用できる可能性がある。特にローヤルゼリーに固有に含まれている脂肪酸類は、褐色脂肪組織の熱産生を亢進する可能性がある。そこで東海大学の寺尾氏らは、ローヤルゼリーが脂肪組織の熱産生に及ぼす影響について肥満モデルを用いて明らかにしようと試みた。

試験では高脂肪食のみを17週間摂取した群と、5%ローヤルゼリー含有高脂肪食を同じ期間摂取した群を比較し、ローヤルゼリーが肥満に及ぼす影響を解析した。その結果ローヤルゼリー摂取群では、高脂肪食群と比較して有意な脂肪組織重量の減少が認められた。また肥満に伴う肝臓中の中性脂肪量の増加やインスリン抵抗性の進行といった生活習慣病の指標も有意に改善したことから、肥満に伴う生活習慣病のリスクを低減できると考えられた。しかしながらローヤルゼリー摂取による摂食量や自発活動量は各群で差がなかったことから、ローヤルゼリーによる肥満抑制のメカニズムは、食事量や運動量に依存しないものと考えられた。そこで、褐色脂肪細胞活性化の指標であるUCP1やCOXIVの発現を解析したところ、ローヤルゼリー摂取群で、褐色脂肪組織におけるそれらの因子の発現が特異的に増加したことから(図)、ローヤルゼリーによる抗肥満のメカニズムとして、褐色脂肪組織の活性化によるエネルギー消費の増加が考えられた。

以上の結果は、ローヤルゼリーをライフスタイルの中で継続的に摂取することで、褐色脂肪組織における熱産生の増加を促し、肥満を予防できる可能性を示している。今後ローヤルゼリーのどのような成分が熱産生を誘導するのか、詳細なメカニズムの解明が期待される。

ローヤルゼリーは、身体の内側からドライアイを予防・改善することで、眼の健康に役立つ可能性が示唆された。

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