研究成果のご紹介

ローヤルゼリーは創傷の治癒を促進する 〜関与成分となるペプチドを同定〜

スロバキア科学大学(スロバキア) ユライ・マイタン(2013年度採択)

皮膚の表面(表皮)に存在するケラチノサイト(角化細胞)は、表皮が損傷を受けると傷を塞ぐ方向に移動(遊走)して表皮を回復させる。その創傷治癒の過程においては、マトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP-9)という酵素が重要な役割を果たすことが知られている。MMP-9は未成熟なケラチノサイトによって産生され、コラーゲンやエラスチンなど、細胞の足場となるタンパク質を分解することで、ケラチノサイトの遊走を促進する。

蜂蜜やローヤルゼリーなどの養蜂産品は古くから創傷を治癒する為に用いられてきた。ローヤルゼリーは抗菌・抗炎症・免疫調整など複数の効果が知られている一方で、創傷治癒に関与する成分は同定されていない。そこでマチターン氏らは、ローヤルゼリーの創傷治癒に関する作用機序および成分を解明することを目的として研究を行った。

はじめにマチターン氏らは、ローヤルゼリーのMMP-9に対する効果を確認する為、ヒトの培養角化細胞をローヤルゼリーで処理した。その結果、MMP-9の活性および量は、ローヤルゼリーの添加量の増加に伴って有意に増加した。さらに、機械的に創傷を与えた培養角化細胞におけるローヤルゼリーの効果を調べたところ、ローヤルゼリーを処理した細胞では、ローヤルゼリーを処理しなかった細胞に対して創傷閉鎖が促進された(図)。

MMP-9の活性および量は、ローヤルゼリーの添加量の増加に伴って有意に増加した。

続いて、ローヤルゼリーに含まれるMMP-9誘導物質を特定するための実験を行った結果、ディフェンシン1というペプチド(アミノ酸が連なった成分)に、培養角化細胞からのMMP-9産生に対して、強力、かつ、添加濃度に依存した効果があることがわかった。機械的に創傷を与えた培養角化細胞において、ディフェンシン1の存在下では、創傷閉鎖の速度が、ディフェンシン1を添加していない細胞と比較して顕著に増加した。

以上の結果から、ローヤルゼリーは創傷治癒に有効であり、その作用はMMP-9の発現上昇を介していることが分かった。また、主に作用している成分はディフェンシン1であることが示された。今後は、臨床への応用を目指した研究が期待される。

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