研究成果のご紹介

ローヤルゼリーは腎細胞がん治療薬の副作用を軽減させる
〜疲労と食欲不振を改善し、治療継続に貢献する可能性〜

長崎大学病院 泌尿器科・腎移植外科 宮田 康好(2015年度採択)

転移等のため手術での根治が難しい腎細胞がん患者に投与されるチロシンキナーゼ阻害薬(分子標的薬の一種)は、副作用が高い頻度で現れ、治療を継続する上で重大な妨げとなっている。副作用には、口内炎、手足症候群(腫れ、湿疹、痛み等の重い皮膚異常)、疲労および胃腸症状の他、腎、肝および甲状腺の機能障害等が知られている。これらの発症には、複雑な炎症、酸化ストレスおよび免疫系の反応が関与していると考えられている。

ローヤルゼリーは、多様な生理活性物質を含み、抗炎症作用、抗酸化活性および免疫調節作用を示すことがこれまでに報告されている。これらの作用により、がん治療の副作用(口内炎、腸傷害、腎および肝毒性)に対してローヤルゼリーが保護作用を示すことも、予備的な研究により報告されている。

このような背景から、長崎大学病院の宮田康好氏らの研究グループは、ローヤルゼリーがチロシンキナーゼ阻害薬による副作用の発症を抑える可能性について、腎細胞がん患者の協力を得て検討をおこなった。この研究は、無作為割付二重盲検プラセボ対照試験で実施された。

インフォームド・コンセントを得た腎細胞がん患者(33名、男/女 = 23/10、67.6 ± 6.6 歳)を無作為に2群に分け、がん治療薬(チロシンキナーゼ阻害剤:スニチニブ、パゾパニブ、アキシチニブまたはソラフェニブのいずれか)の服用と並行して、一方の群にローヤルゼリー粉末(800 mg/回 × 3 回/日)を、もう一方の群にプラセボ(偽薬)を3か月間、継続して摂取してもらった。そして、がん治療薬の副作用に対してローヤルゼリーが改善効果を示すか検討した。

その結果、ローヤルゼリー摂取群では、プラセボ群と比べて、がん治療薬の副作用である疲労と食欲不振が軽減された。とくに疲労感について、まったく疲労を感じない人の割合がプラセボ群では11.8%だったのに対し、ローヤルゼリー摂取群では68.8%にのぼった。一方、激しい疲労を感じる人の割合がプラセボ群では11.8%だったのに対し、ローヤルゼリー摂取群ではそのような厳しい副作用が現れた人は見られなかった(図)。

酵素分解ローヤルゼリーの飲用量に応じて握力の低下が抑制され、高用量で飲用したグループでは、プラセボを飲用したグループよりも顕著に抑制されたことが明らかとなった

また、試験期間中に薬の副作用によって薬の減量または投与を中止せざるを得ない人の数が減少した。これらの副作用の軽減は、とくに治療薬としてスニチニブを服用した人に見られた。

これらの結果から、ローヤルゼリーを腎細胞がんの治療薬と併用して摂取することで、その副作用を軽減させることが明らかとなった。腎細胞がん患者の生活の質の改善は、治療薬の継続投与に有用であり、薬の治療効果を上昇させる可能性がある。

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