研究成果のご紹介

ローヤルゼリーは持久的運動の効果を高める
〜運動による筋肉の機能向上を促進する可能性〜

東京大学大学院 総合文化研究科 高橋 祐美子(2017年度採択)

健康・美容意識の高まりにより、運動トレーニングが注目を集めている。高いパフォーマンスが求められるアスリートに限らず、一般の人にとっても、筋肉を鍛える運動は必要である。筋肉には、立つ、座る、歩くといった日常的な動作を支えるのはもちろん、体中に血液を行き渡らせるポンプとなったり、熱を産生して体温を保ったりするなど、さまざまな働きがあるためである。

筋肉の細胞内には、ミトコンドリアという小器官がある。ミトコンドリアは、筋肉が収縮するのに必須であるエネルギー源(ATP)を大量に産生しているため、ミトコンドリアの増加や機能の亢進は、運動能力の向上につながる。

さらに、糖尿病予備軍に見られるインスリン抵抗性や肥満、およびサルコペニア(加齢による筋肉量や筋力の低下)では、骨格筋のミトコンドリアが減少していることが知られている。したがって、ミトコンドリアの維持・増加や機能亢進は、健康を維持したり、生活の質(QOL)を改善したりするためにも重要である。

それでは、ミトコンドリアの機能を亢進させるにはどうしたらよいのだろうか。やはり持久的な運動を行うことである。アスリートが日々行っているトレーニングは、ミトコンドリアの機能を亢進させ、結果としてパフォーマンスの向上につながっている。アスリートのみならず、一般の人にとっても運動は重要である。しかし、怪我や加齢などの理由によって充分な運動を行うことが困難な場合があるため、運動の効果をより高める方法が求められている。

そのような背景から、東京大学大学院の高橋祐美子氏の研究グループはローヤルゼリーに注目した。ローヤルゼリーに含まれるタンパク質、アミノ酸、および特有成分であるデセン酸(10-ヒドロキシ-2-デセン酸)が、ミトコンドリア量の増加につながる作用を持つことが報告されているためである。高橋氏らは、ローヤルゼリーを摂取することで、持久的トレーニングによる骨格筋のミトコンドリアの増加を増強させることができるかを、ミトコンドリア量の指標として広く用いられているクエン酸合成酵素を測定し、検討を行った。

試験では、健常モデルを、持久的運動(トレッドミル運動、20 m/分×60 分、5回/週)を行う群あるいは行わない群に分け、さらにそれぞれの群を、ローヤルゼリー粉末(1.0 mg/g体重)を運動前に摂取する群あるいは摂取しない群に分けた。そして、試験開始から3週間後に、ヒラメ筋(ふくらはぎを形成する筋肉のひとつ)におけるミトコンドリアのクエン酸合成酵素の最大活性を測定した。

その結果、ローヤルゼリーを摂取した後に持久的運動を行った群では、ローヤルゼリーを摂取したが運動をしなかった群と比べて、クエン酸合成酵素の最大活性が高値であった(図)。また、運動せずローヤルゼリーも摂取しなかった群と比べても、その酵素活性は高値であった。ローヤルゼリーを摂取せずに運動した群と比べると、その酵素活性は高値である傾向が見られた。

ローヤルゼリーを摂取した後に持久的運動を行った群では、ローヤルゼリーを摂取したが運動をしなかった群と比べて、クエン酸合成酵素の最大活性が高値であった

これらの結果から、ローヤルゼリーを持久的運動の前に摂取すると、骨格筋のミトコンドリアにおけるクエン酸合成酵素の最大活性が上昇することが明らかとなり、ミトコンドリアの機能を高めることが示された。ローヤルゼリーが、筋肉に対する運動の効果を増強することで、運動能力の向上や健康維持に役立つことが期待される。

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