山田養蜂場運営の研究拠点「山田養蜂場 健康科学研究所」が発信する、情報サイトです。ミツバチの恵み、自然の恵みについて、予防医学と環境共生の視点から研究を進めています。

所長からのメッセージ

第2章 ヒト試験の種類と科学的信頼性のレベル

第1章で、健康情報として最も信頼できるのは、ヒト試験の結果に基づいた情報であると紹介しました。しかし、ヒト試験にもさまざまな方法があり、それによって科学的信頼性の高さが異なります。第2章では、主なヒト試験の種類について紹介します。

ヒト試験には、研究者が対象者の日常的な行動を調査する「観察研究」と、研究者が対象者に対して、試験食を摂取してもらうなどの、何らかのコントロールを行う「介入研究」があります。今回は介入研究の種類に焦点を当てます。

介入研究の基本的な手法は、研究者が試験参加者(被験者)に、特定の期間、評価したい物質(食品や成分など)を摂取させ、摂取させた物質の効果や安全性を推定するというものです。このとき、被験者の集団を2つ以上のグループに分けた上で、あるグループには評価したい物質を含む試験食(あるいは試験薬)、別のグループには評価したい物質を含まず、試験食と見分けがつかないよう作製した偽薬(プラセボ)をそれぞれ与えて効果を比較すると、物質を摂取するという行為による影響(プラセボ効果)を除くことができ、結果の信頼性がより高くなります

加えて、被験者のグループの割り振りを「ランダム化(無作為化)」により行い、意図的に行わないことも重要です。例えば、試験食の影響を受けやすいと思われる人を、試験食が与えられるグループにわざと振り分けたりしてはいけないということです。
この手順にどのような工夫を加えるかにより、以下の3種類の試験デザインに分類されます。

非盲検(ひもうけん)試験

どの被験者にどの試験物質が与えられているか、研究者や医師、看護婦、実施担当者等の試験する側と被験者の両方に知らされた上で行われる試験を「非盲検試験」と言います。オープン試験とも呼ばれます。これは、偽薬を用いず、試験したい物質だけで実施する場合もあり、ヒト試験の中では最も科学的信頼性の低い試験です。

なぜなら、被験者が自分に与えられた試験物質の内容を知ることで、「この物質を摂取したのだから、よい効果が現れるに違いない」という思い込みを持つため、その物質が効果を持たないものでも、何らかの作用が結果に現れてしまうことがあるからです。また、研究者の先入観や期待が、被験者の状態や得られたデータの見方に影響する可能性もあるためです。

単盲検(たんもうけん)試験

研究者等の試験側は試験物質の割り振り内容を知っていますが、被験者は知らされないで行われる試験を「単盲検試験」と言います。つまり、被験者のグループのうち、どのグループが試験食を与えられ、どのグループが偽薬を与えられたのか、被験者にわからない条件で行なわれる試験ということです。

この方法は、被験者のプラセボ効果を除くことができるため、非盲検試験より科学的信頼性は高くなります。しかし、研究者側の先入観は除くことができず、研究者側の態度から、被験者が試験物質の内容を察してプラセボ効果が誘導される等、主観的な影響が表れる場合があるため、結果の解釈には注意が必要です。

二重盲検(にじゅうもうけん)試験

被験者に接触してデータ取得を行う現場の研究者側と被験者のどちらにも、誰にどの試験物質を割り振ったかを知らせずに行う試験を「二重盲検試験」と言います。つまり、被験者のグループのうち、どのグループが試験食を与えられ、どのグループがプラセボを与えられたのか、両者にわからない条件で行なわれる試験で、前述の研究者側と被験者以外の第三者が試験を統括管理します。

この方法は、被験者におけるプラセボ効果や研究者の先入観を除くことができるため、ヒト試験の中では、科学的信頼性が最も高い方法です。

このように、ヒト試験の科学的信頼性の高さには、「プラセボ効果をいかに除くか」が重要となります。

身近にある健康情報が、プラセボ効果や研究者の先入観等が除かれたヒト試験によるものか、チェックしてみましょう。

第2章のまとめ:

  • ヒト試験のポイントは、「プラセボ効果をいかに除くか」。
  • そのために、評価したい物質を含む試験食を摂取するグループと、評価したい物質を含まない偽薬(プラセボ)を摂取するグループとの効果を比較する。
  • 「二重盲検試験」が、科学的信頼性が最も高い。

監修:山田養蜂場 健康科学研究所 所長 八巻礼訓

前のページへ

次のページへ

2/4