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「健やかに」発刊録

「健やかに」2013年3月号 腸内環境と自律神経を整えて生活習慣病にならないキレイな血液に!

腸内環境と自律神経を整えて生活習慣病にならないキレイな血液に!

病気を寄せつけない体とは、血液がキレイで、血流のよい体です。血液をキレイに保つためには、腸内環境を整え、自律神経のバランスを良好にすることが不可欠。“病気”と“血液と腸と自律神経” の関係を詳しく見てみましょう。

腸をキレイにすると健康な血が全身を巡る

キレイな血液は、サラサラと流れて全身を巡り、栄養や酸素を届けます。しかし、汚れた血液はスムーズに流れず、全身の細胞は酸素や栄養が不足しがちに。そうなると体によくないことが生じます。
そのひとつは、免疫力の低下。風邪をひきやすくなるなど、病気になりやすい体になるのです。
また、動脈硬化や高血圧などの生活習慣病も、その大きな原因は、サラサラと流れない汚れた血液。「血液の質は腸でつくられる」ともいわれます。腸の状態がよければキレイな血液が、悪ければ汚い血液がつくられるのです。
腸をキレイにし、キレイな血液を全身に巡らせることが健康の秘訣。便秘などの腸の不調は、全身の不調の元となります。

自律神経が腸をコントロール

そんな腸の動きをコントロールしているのが自律神経です。手や足などは脳の指令を受けて動いていますが、呼吸や血液循環、消化吸収などは、自律神経によって機能をコントロールされています。つまり、脳と同じくらい自律神経は大切な役割をしているのです。
自律神経は交感神経と副交感神経の2つに大別され、この2つがバランスよく働くことで、自律神経の調和が保たれます。この調和が乱れると、自律神経の支配下にある腸の動きも乱れます。すると、便秘などの腸トラブルも起きやすくなるのです。

腸と自律神経は相互に作用する

腸、自律神経、血液のすべてを良好に

このように血液と腸、自律神経は互いに影響し合っています。このうちいずれかがトラブルを起こせば、連鎖的にほかの状態も悪くなり、生活習慣病などを招くことになります。そんな負のスパイラルに陥らないように、腸のこと、自律神経のことをよく知り、すべてを良好に保つ生活術を身につけましょう。

慢性の便秘は腸内環境を悪化させ、血液を不健康にする

慢性の便秘は腸内環境を悪化させ、血液を不健康にする不健康な腸の代表は、便秘が慢性化した状態です。便が長く腸内にとどまると、腐敗が進み、悪玉菌が増加。悪化した腸内環境で発生した有害物質は血液に乗って、全身を巡ることになります。
不健康な血液は、赤血球がくっついていたり、変形していたり、完全に壊れてしまっている場合もあります。そんな血液では、酸素や栄養をきちんと運べませんし、細い末梢血管を通ることもできません。汚れた腸でつくられる血液では、酸素や栄養を全身に届けることができないのです。

交感神経が強すぎ副交感神経が弱いと腸は正しく動かない

便秘は食生活の偏りなどのほか、腸をコントロールする自律神経が乱れることでも起こります。
自律神経のうち、交感神経はアクセルの働きをし、副交感神経はブレーキの役目をしています。アクセルとブレーキの両方がよく効く状態が、自律神経のバランスがとれた状態です。
内臓の多くは、アクセルである交感神経が強くなると活発に働きます。しかし、胃や腸などの消化器は、交感神経が強すぎると、摂り入れた食物を運んでいく「ぜん動運動」がうまく行われなくなってしまいます。腸が正しく働くためには、副交感神経がきちんと働いていることが大切です。

交感神経が強すぎ副交感神経が弱いと腸は正しく動かない

ストレスや加齢が副交感神経の働きを低下させる

人が活動的なときに働くのが交感神経、リラックスしたときに働くのが副交感神経です。健康であるためには、交感神経と副交感神経の働きがどちらも高いことが理想です。ところが、刺激やストレスが多い現代人の生活は、どうしても交感神経が優位になりがちです。実際に、多くの人が交感神経優位・副交感神経劣位のパターンを示しています。
それだけでなく、順天堂大学で私たちの研究グループが大規模な調査を行ったところ、男性は30歳を過ぎたころ、女性は40歳を過ぎたころに、副交感神経の働きが急降下することがわかりました。
したがって私たちの多くは、積極的に副交感神経の働きを上げる必要があるといえます。副交感神経の働きを上げ、腸内環境を整えることで、負のスパイラルは正のスパイラルに変わるのです。

更年期と自律神経

気温の変化などと関係なく、突然、のぼせ・ほてり・発汗などが起こる「ホットフラッシュ」は、更年期に現れやすい症状として知られています。ホットフラッシュは自律神経が乱れることにより血管の拡張・収縮を正しくコントロールできなくなり、体温調節ができなくなって起こると考えられます。リラックスを心がけて自律神経を整えることが、更年期障害の改善に役立つでしょう。

ローヤルゼリーが更年期女性の肩こりを軽減

ホットフラッシュとともに更年期の女性を悩ませる症状が「肩こり」です。肩こりの原因は、血行不良、筋肉疲労、ストレスなどさまざまですが、冷え症の人の中には肩こりを訴える人が多いことがわかっています。そこで、ローヤルゼリーの飲用が冷え症を改善することに着目し、肩こりへの作用を調べる試験が行われました。その結果、ローヤルゼリーの継続的な飲用により、首筋のはりの自覚症状が改善され、肩こりを軽減することが確かめられました。

きちんと動く、キレイな腸にしましょう

自律神経のバランスを整えるためにも欠かせない、健やかな腸を保つためには、具体的にはどうすればよいのでしょう?簡単に実践できる方法をご紹介します。

朝1杯の水で胃腸を目覚めさせる

朝、目覚めたらコップ1杯の水を飲みましょう。空っぽだった胃腸は、水に反応して動き始めます。すると副交感神経のスイッチが入り、自然な便意が促されます。

一日3食のすすめ。腸と脳を刺激し、体温を上げる

一日2食や、1食という人もいますが、食事の回数が少なければ、腸への刺激も少なくなり、腸の動きが悪くなってしまいます。食事には体温を上げる役割もあります。さらに、噛むことによる脳への刺激もあります。私のおすすめは一日3食。カロリー過多にならないよう、量を調整しましょう。

毎日いろいろな種類の乳酸菌を摂る

腸内環境を整えるよい方法は、乳酸菌を摂って善玉菌を増やすことです。私のおすすめは、乳酸菌が豊富なヨーグルトを食べること。一日200gを目安に毎日食べましょう。また、乳酸菌は納豆などの発酵食品にも含まれていますので、いろいろな種類の乳酸菌を摂るようにしましょう。

日和見菌を味方につけよう

夜のジュース

腸のためにも、副交感神経の働きを高めましょう

腸内環境を良好に保つためにも大切なのが、自律神経を整えること。現代人が低くなりがちな副交感神経を高め、バランスを整えるコツを覚えておきましょう。

ゆっくり動作する

自律神経のバランスは、ちょっとしたことで乱れるものです。例えば焦ったときは、交感神経の働きがグンと高くなります。そんなときは意識してゆっくり動いたり、ゆっくり話したりしましょう。気持ちが落ち着き、副交感神経の働きが高まります。

ゆっくり深い呼吸をする

深くゆっくり深呼吸をすると、心が落ち着き、ドキドキも収まりますね。副交感神経の働きが高まり、血圧も安定します。

ジョギングよりもウォーキング

ジョギングは呼吸が速く、浅くなるため、副交感神経の働きを下げてしまいます。中高年の人には、深い呼吸を保ちながらできるウォーキングがおすすめです。

睡眠を十分にとる

睡眠不足は自律神経のバランスを著しく狂わせます。どんな人でも徹夜をすると、翌朝は副交感神経がほとんど上がりません。個人差がありますが、6~7時間程度の睡眠が必要でしょう。

自律神経を整える体操

腸のためにも、副交感神経の働きを高めましょう

小林先生ご自身が実践している、腸と自律神経を整えるために効果的な生活をご紹介します。

1.朝食は軽くても欠かさない

朝食は軽くても欠かさない私の朝食は1 杯の水、バナナ、食パン1 枚程度。軽くても朝食を欠かさないのは、昼食までの栄養とエネルギーを補給するだけでなく、体内時計をコントロールする時計遺伝子にスイッチを入れ、腸のぜん動運動を促し、副交感神経をアップする目的があるからです。

2.30分の余裕を持つ

30分の余裕を持つ余裕を持って行動すれば、心にゆとりが生まれ、副交感神経が上昇。アクシデントが起こっても落ち着いて対応できます。30 分の余裕が、その日一日をうまくいくように運んでくれるのです。

3.寝坊した朝は、できるだけゆっくり歯みがき

寝坊した朝は、できるだけゆっくり歯みがき寝坊してしまったときは、難しいことかもしれませんが、あえてゆっくり歯をみがきます。あわてることで交感神経を急上昇させてしまうと、思わぬ失敗につながりかねないからです。ゆっくりした動作は副交感神経を高めてくれます。

小林弘幸先生

監修
小林弘幸先生
1960年埼玉県生まれ。医学博士。順天堂大学医学部教授。日本体育協会公認スポーツドクター。自律神経研究の第一人者として、数多くのトップアスリートや芸能人のパフォーマンス指導を行っている。便秘改善のスペシャリストとしても知られ、順天堂大学医学部附属順天堂医院で大学病院として日本で初めて便秘外来を開設。『「美腸ジュース」ダイエット』(家の光協会)などの著書がある

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