山田養蜂場運営の研究拠点「山田養蜂場 健康科学研究所」が発信する、情報サイトです。ミツバチの恵み、自然の恵みについて、予防医学と環境共生の視点から研究を進めています。
骨は体の中にあって、普段は目で見ることができませんが、きのうの骨と、今日の骨は少し違っています。古くなった部分は、破骨(はこつ)細胞により破壊されます。これを「骨吸収(こつきゅうしゅう)」といいます。そこに骨芽(こつが)細胞が集まって新しい骨をつくる「骨形成(こつけいせい)」が行われます。骨吸収と骨形成をくり返して、骨は常に新しくつくり替えられているのです。これを「骨
代謝(こつたいしゃ)」といいます。
骨芽細胞と破骨細胞の活動バランスがとれていれば骨は健康ですが、加齢とともに骨芽細胞の働きは低下します。また、女性は閉経後、破骨細胞の活動を抑えるホルモンがほとんど分泌されなくなるため、骨形成よりも骨吸収のほうが勝ってしまいます。そのために女性は骨粗しょう症になりやすいのです。
骨芽細胞を増やしたり、活発にしたり、破骨細胞の活動を抑えることができれば、骨粗しょう症の予防・改善になります。
骨代謝が正常に行われるために、ローヤルゼリーが役立つかどうかを調べる、次の2種類の試験が実施されました。骨形成に必要な骨芽細胞に対する作用と、骨の強度を支えるために必要なコラーゲンに対する作用を調べるものです。
①骨芽細胞に、ローヤルゼリーを0.01、0.1mg/mlの濃度でそれぞれ添加。24時間培養し、骨芽細胞の増殖を観察しました。
②骨芽細胞に、濃度0.1mg/mlのローヤルゼリーを添加し、培養。コラーゲン産生量を測定しました。
①では、ローヤルゼリーをどちらの濃度で添加した場合も、骨芽細胞が増殖していました。
②では、ローヤルゼリーなしと比べてローヤルゼリーを添加したほうがコラーゲン産生量が増加していました。
以上の結果から、ローヤルゼリーに骨形成を促す作用がある可能性が示されました。骨形成が促進され、骨吸収とのバランスがとれていれば、骨代謝が正常に行われ、骨粗しょう症になるのを防ぐことができます。
この試験は、骨芽細胞を使った「試験管内試験」で行われました。この試験のほかに、実際に人にローヤルゼリーを摂取してもらう「ヒト試験」があります。ヒト試験では、ローヤルゼリーの人への作用がより直接的に確かめられますが、効果があったときに、それがどのような仕組みによるものかはわかりません。そこで、試験管内での試験を行い、その仕組みを確かめる必要があるのです。
このように複数の試験を行うことによって、より正確な情報を得られるように研究が重ねられています。
65歳以上の男女180人を3グループに分けて試験を実施しました。グループは、「酵素分解ローヤルゼリーを高用量飲用する」、「酵素分解ローヤルゼリーを低用量飲用する」、「プラセボ(※)を飲用する」の3つ。それぞれを1年間、毎日飲用してもらいました。
飲用開始前と1年間飲用後に、筋力や骨密度などを測定したところ、次の結果が得られました。
①プラセボを飲用したグループは筋力が減少したのに対し、酵素分解ローヤルゼリーを飲用したグループは筋力が増強し、酵素分解ローヤルゼリーを飲用するほど増強の程度が大きくなりました。
②酵素分解ローヤルゼリーを飲用したグループは、骨密度の低下が抑制されました。
グルコサミン、コンドロイチン、ローヤルゼリーを併せることで骨代謝にどのように作用するかを検証しました。
試験管内で骨芽細胞と破骨細胞それぞれに、ローヤルゼリー、グルコサミン、コンドロイチンを単独、または併せて添加し、グラフ1~3の内容を測定しました。
3つの成分を併せたとき、次の結果が得られました。
●骨芽細胞の分化が相乗的に促進。
●カルシウム沈着量が増加し、骨芽細胞の石灰化が促進。
●何も添加しなかったものと比較して分化した破骨細胞が減少。
ヒト試験を行う際には、「これを摂取するとよい効果がある」と思い込む心理的な作用が、実際の結果に影響を与えることがあります。
その心理的な作用を除くために用いられるのが「プラセボ(偽薬)」です。プラセボは、効果を確かめたい成分を含んでいる薬(実薬)や試験食と、見た目も、重さや、匂いも全く違いがないようにつくられています。
「これを摂取するとよい効果がある」という思い込みは、被験者だけでなく、試験を実施する試験者のほうにも作用することがあります。たとえば被験者に薬や試験食を渡す際に、試験者が本物かプラセボかを知っていると、表情に出てしまい、被験者の心理にも影響を及ぼすことがあります。試験者にも被験者にもどちらが本物かを知らせずに行うものが「二重盲検法」で、もっとも信頼性の高い試験方法とされています。
グラフなどを見たときに、どちらか一方がもう一方と異なる値を示していれば、「差がある」と思いますね。けれども研究では、その差が「偶然では起こらないといえる差」かどうかを判断する基準があります。その基準に達していなければ、偶然の差であると判断されるのです。
本当に違いがあったといえる差のことを「有意差」といいます。表やグラフ中に a の表示があった場合、示された結果に偶然、差が生じる確率は5%以下であり、有意差があることを示しています。