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最新の話題
(Headlines)

ニホンミツバチにサックブルード病広がる?

ニホンミツバチの飼育普及をめざす日本在来種ミツバチの会の会合(2010年7月17日、東京)で、藤原誠太氏は、「九州から和歌山にいたる地域で、サックブルード病が広がって脅威となっている、韓国でも在来種の養蜂に打撃を与えている」、と語った。Sac Brood Virus の感染に原因するサックブルード病は、1976年タイで最初に発見され、その後、インドの北部、東部ネパールなどのトウヨウミツバチに広がった。サックブルード病のウィルスに関しては、核酸の塩基配列や3次元構造すでに解析されている。

新たに発見されたノゼマ病の病原体はミツバチの種を越えて感染する

深刻な被害をもたらすノゼマ病の病原体、ノゼマ原虫 Nosema ceranae は、地域に局在していると考えられていたが、トウヨウミツバチからセイヨウミツバチへの感染が確認され、アジアおよび米国での脅威になっている。最近そのレビュー論説が発表された。

・Y. P, Chen, Z. Y. Huang, Nosema ceranae, a newly identified pathogen of Apis Mellifera in the USA and Asia, Apidologie, 41: 364-374, 2010.

蜜源の多様性の喪失はミツバチの免疫力の低下を招く?

多細胞動物の免疫力は、摂食によるタンパク質に依存している。フランス国立研究機構(INRA)の研究者たちは、採集対象となる花粉の種類が少ないと、ミツバチの集団(コロニー)としての免疫力の低下を招くという研究結果を発表した。これは蜜源植物の種類が少なくなることを意味しており、単一の蜜源に依存する養蜂が、蜂群崩壊症候群CCDの原因になりうることを示唆するものである。同じ研究者たちは、ノゼマ病の原因となる微胞子虫 Nosema microspores と農薬であるネオニコチノイド neonicotinoid に暴露されたミツバチは免疫力が低下し、病原体に感染しやすくなる、とも報告している

・C. Alaux et al., Diet effects on honeybee immunocompetence, Biology Letters, on line January 2010.
・C. Alaux et al., Interaction between Nosema microspores and a neonicotinoid weaken honeybees (Apes mellifera), Environmental Micorobiology, 2009.

寄生バチのゲノム解読

ミツバチに続いて、ハチの仲間であるハエに産卵する寄生バチ(キョウソヤドリコバチ)である Nasonia vitripennis N. giraulti, N. longicornis のゲノム解読が行われ、ミツバチやハエ、他の昆虫などとの比較がなされた。また、DNAメチル化に関わる遺伝子群や、多様な毒を産生する遺伝子などが同定された。これらの知見は、これらのハチを生物農薬として使うための基礎知識となる可能性がある。

・The Genome Working Group, Functional and Evolutionary Insights from the Genomes of Three Parasitoid Nasonia Species, Science, 327: 343-348.

ミツバチ不足問題の専門家会議

農林水産省は、最近のミツバチ不足問題に対応するために、ミツバチを受粉媒介者 Pollinator として使っている業者を含む専門家会議を設置した。最初の会合は、6月15日に開催された。

http://www.maff.go.jp/j/press/seisan/c_gijutu/090612.html

賢いミツバチは花の誘惑を見破る

賢いミツバチは悪い花の誘惑に乗らない。花は芳香を放ってミツバチを引き寄せるが、しばしば、品質の悪い蜜をもった花も、芳香でミツバチを誘惑するが、ミツバチは学習によって、本当によい蜜が採取できる植物と見せ掛けだけのミツバチに価値のない植物を見わけていることがわかった。

・G. A. Wright, A. F. Choudhary and M. A. Bentley, Reward quality influences the development of olfactory biases in honeybees, Proc. R. Soc. B, 15 April 2009. (http://rspb.royalsocietypublishing.org/content/early/2009/04/09/rspb.2009.0040.abstract)

環境中のミツバチの生存が脅かされている

環境中のミツバチの減少が報告されているが、事態は改善されていない。その原因として、感染、餌の不足、農薬の影響、交配方法の問題など指摘されているが、研究者たちは、それらの要因が複合した結果という見方を強めている。欧米では、対策に予算が投じられている。

・Honeybees under attack on all fronts by Debora MacKenzie, NewScientist, 16 February 2009

(http://www.newscientist.com/article/mg20126954.600-honeybees-under-attack-on-all-fronts.html)

長寿に関わるセミナーがNIHで開催されている

これらのセミナーでは、Resveratrolの作用に言及されている。マウスの場合、寿命の延びより、健康へのよい影響が確認されている。

NIHのビデオ記録(http://videocast.nih.gov/pastevents.asp

2009年1月16日、Rafael de Cabo, Interventions for Healthy Aging and Longevity: Is There a Fountain of Youth?

2008年11月19日、Leonard Guarente, Sirtuins, Aging and Disease

2型糖尿病薬への期待、脂肪細胞のホルモンApelinとResveratrolを模した薬物

2型糖尿病の治療薬としては、脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンAdiponectinの効果が知られているが、最近、同じように脂肪細胞から分泌されるアペリンApelinも血糖値を低下させる効果のあることが、マウスを使った実験で見いだされ、2型糖尿病の治療効果への期待が高まった。また、グラクソスミスクライン社は、レスベラトロールに似た化合物を合成し、強い血糖値の制御が可能なことを、糖尿病のモデルマウスで確認した。

Science Friday: C. Ronald Kahn, Diabetes Research Update (January 9, 2009)

ビタミンB3はアルツハイマー疾患を改善する?

サプリメントとしても入手可能なビタミンB3にアルツハイマー疾患の改善効果があることが、マウスを使った実験で発見され、現在ヒトへの効果がしらべられている。ビタミンB3は、NAD依存性の脱アセチル化酵素であるSirtuinを阻害することで、神経細胞中のマイクロチューブルの中のtauタンパク質の変性を阻止する、というのがその分子機序だと推定されている。ただし、効果が確かめられたのは、極めて高濃度の投与においてである。

Science Friday: Vitamin B3 and Alzheimers (November 7th, 2008)

・Green KN, Steffan JS, Martinez-Coria H, et al. Nicotinamide restores cognition in Alzheimer's disease transgenic mice via a mechanism involving sirtuin inhibition and selective reduction of Thr231-phosphotau. J Neurosci, 28:11500-10, 2008.

・The Alzgene database project (www.alzgene.org)

・Bertram L, McQueen MB, Mullin K, Blacker D, Tanzi RE., "Systematic meta-analyses of Alzheimer disease genetic association studies: the AlzGene database." Nat Genet 39(1): 17-23, 2007. (PubMed abstract)

運動の代わりになる薬が発見された

核内受容体の研究者として著名なR. Evansは、4年前に、核内受容体の一種であるPPARβ/δの作動薬を投与することで、トレーニングをしなくとも、トレーニングした結果作られる筋肉をもつマウスがつくられることを見出したが、今度は、そうした化合物を、AMPKの作動薬を一緒に投与することで、あたかも運動したのと同じ効果を上げられることを示した。

Science Friday: R. Evans, Exercise in a pill, (August 1, 2008)、この論文は下記。

Vihang A. Narkar et al, AMPK and PPARδ Agonists Are Exercise Mimetics、Cell, 134(3): 405-415, 2008.

・Grant D. Barish et al., PPARδ regulates multiple proinflammatory pathways to suppress atherosclerosis, PNAS, 105(11): 4271-4276, 2008.

ロイヤルジェリーの効果はRNAiで真似られる?

ミツバチの女王蜂と働き蜂は、遺伝的には同一でありながら、食べものとしてロイヤルジェリーを与えられるか否かで、それぞれの特徴を備えるようになることが知られている。最近Kucharskiらは、新たに脱皮したミツバチの幼虫で、DNAメチル化酵素DNA methyltransferaseであるDnmt3の機能を抑制すると、ロイヤルジェリーを食べさせたと同じような女王蜂になるという現象を見つけた。Dnmt3は、epigeneticな働きに関係しているので、これは生殖や行動がepigeneticに制御されていることを示唆するものである。この研究は、ロイヤルジェリーの効能のメカニズム解明にも新しいヒントを与えるものである。

・R. Kucharski, et al., Nutritional Control of Reproductive Status in Honeybees via DNA Methylation, Science 319: 1827-1830, 2008. (Science abstract)

「最新の話題」作成の基盤となっている情報源

専門誌: Nature, Drug Discovery Today, Nature Reviews Drug Discovery

シンポジウムやセミナー団体: BioIT World、Cambridge Health Institute のSeminar、Keystone Symposia

公的な研究機関やメディア: NIHのSeminar、NPR(米国のラジオ放送)のScience Friday

国内情報: ファルマシア、化学と工業、日経のBTJジャーナルなど。新聞は、日経産業新聞、日本経済新聞など

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