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Ⅳ. 新しい医学とミツバチ健康科学
   —2.ゲノム解読計画で加速される生物医学の進歩—

現代の生命観

表4-1.分子生物学の形成まで
1859 C. Darwin の「種の起源」刊行
1865/66 G. Mendel の遺伝法則発表
1869/71 F. Miesher DNAの発見
・・・・・・・・・・
1944 O. Averyら、遺伝物質がDNAと同定
1944 E. Schrödingerの本, What is Life? の刊行
1953 Watson-Crick、DNAの2重ラセン構造提唱
1959/60 Kendrew/Perutz、タンパク質の構造解析
1960 Jacob-Monod、遺伝子制御Switch機構
1961 S. Brenner/F. Crick、Genetic Codeの解明

    医学は生物学を基盤とする疾病制御の科学であり、医療は医学を基盤とするサービスの実践である。現代生物学の基礎になっているのは、分子生物学である。分子生物学は、DNAが遺伝を担っている物質であることがエイブリー(O. Avery)らによって証明された1944年から、ワトソンとクリックによって、DNAの2重ラセンモデルが提唱された1953年、さらに遺伝暗号が解明されたそれから約10年の間に、学問としての基礎が築かれた(表4-1)。
    その分子生物学を特徴づける考え方は、以下のようなものである。我々が生命 Life、あるいは生物 organism と呼んでいる対象は、細胞から構成されている集合体であり、その構成要素である各細胞には、その細胞あるいは個体を特徴づける遺伝的な物質であるDNAが存在しており、そのDNAは、4種類の塩基と呼ばれる分子(アデニン Adenine、グアニン Guanine、チミン Thymine、シトシン Cytosine;それぞれ A, G, T, Cと略す)を基本単位とする鎖のような繋がりが2本、互いに相補的に捩れた階段状に弱く結合した、2重ラセン構造をしている。
    条件が整えば、鎖状のDNAは、情報の鋳型となってRNAが合成され、今度はそのRNAの鎖が鋳型となってアミノ酸の鎖であるタンパク質が合成される。このように、DNAを情報の鋳型(テープ)として見た場合、DNA → RNA → タンパク質という方向に情報が写し取られていく。このことをDNA2重ラセン構造模型の提唱者の一人であるクリック F. Crick は、「分子生物学のセントラルドグマ」と呼んだ。この機構は、現代生物医学の基礎となる分子生物学の基本概念である。ただし、ここでいうDNAは、DNA全体でなく、その一部であり、しばしば遺伝子と呼ばれる(塩基配列)部分のことである。またこの機構には、DNAやRNA自身の自己を複製する仕組みも含まれる。DNA上の遺伝子の配列から対応するタンパク質が生成される過程は、「遺伝子発現」と呼ばれる。

図4-1.分子生物学のセントラルドグマの概念図

    あらゆる生物は細胞からできているから、その後の研究はつまるところ、「どの細胞において、どのような条件でDNAやRNAが自己複製されるか、またDNA → RNA → タンパク質の流れが起きるかの詳細を明らかにしていくこと」だったと言っても過言ではない。
    生命の存在は、情報テープであるDNAの存在と不可分の関係にある。DNAは化学の視点からは、巨大な分子(超分子)の一つであるが、それを基本要素である、A, G, C, Tの配列としてみると、符号の列 code sequence と見なせる。生命は自己複製するが、自己複製する機械を考察したジョン・フォン・ノイマン John von Neumann は、自己複製する機械は、符号列であるテープと、万能の計算機と、万能の組み換え装置を備えている必要がある、という考えを提唱した(vonNeumann66)。ノイマンの考えが正しいとすれば、自己複製する生命は必然的に符号列(情報テープ)を持っていなければならないことになる。だから、DNAの存在は生命において根源的な性質であると言うことができる。また、生命にはDNAのような情報テープが必要だと言うのは、生命には計算機のような性格がある、ということを意味している。
    このことを含め、現在まで分かっている生命の特徴は、次のように要約できる。

参考文献

  • John von Neumann, The Theory of Self-reproducing Automata, A. Burks, ed., Univ. of Illinois Press, 1966.

地球型生命の特徴

   (1)すべての独立した生命は、細胞あるいはその集合体からできている。細胞は膜あるいは壁によって周囲と隔絶した水を含む内部環境を維持している。しかし内部における反応を維持するために、絶えず外界から物質や(太陽の)光を取り込み、外界に不要となった物質を放出している。ウイルスは、生命の部品を有するが、独立した生命系とは見なされない。
   (2)生命系は、自分自身と同じ個体を生成する能力を有する。ただし、次の世代は親とは多少違う性質をもっている(変異している)ことがある。この変異は、生存に影響することがある。
   (3)すべての生命およびそれを構成するすべての細胞は、上記(2)の能力によって、あるものから他のものがつくられたという関係を介した、類縁関係にある。すなわち、生命(生物個体)は互いに類縁関係にあるだけでなく、生命の構成要素である細胞もお互いに類縁関係にあり、この意味で細胞には、2重の戸籍がある。
   (4)生命を構成する主要成分物質は水である。我々がよく知っている生命体の水成分は、およそ60-70%にもなる。その他の物質を構成する元素は、炭素、水素、酸素、窒素、リン、硫黄であり、その他にカルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、塩素があり、さらに鉄、銅、亜鉛、マンガンなどの微量金属が含まれている。これらの元素構成は、海水中のそれに類似している。
   (5)水を除いた生命は、大きく4種類に分類される分子(いわゆる生体分子)から構成されている。それらは、DNAやRNAなどの核酸 nucleotides、タンパク質 proteins、糖 sugars, 脂質 lipidsである。このうち核酸は5種類の塩基を基本単位とする鎖状の分子 polymer であり、タンパク質も20種類のアミノ酸を基本単位とする鎖状の分子 polymer である。糖も数種類の単糖が鎖状に連結したものがさらに分枝をつくって結合した構造をもっている。脂質も、トリグリセリドに代表されるように、グリセリン glycerol と炭素が連なった鎖状の分子である脂肪酸が(3本)結合した複合構造をもっている。
   (6)すべての細胞は、少なくともそれらが生成された最初の段階では、ひとつあるいは複数の親細胞から受け継いだDNAをもっている。このDNAは情報テープのような役割をする。すなわち、DNAの(連続しているとは限らない)ある領域の塩基の並び方が鋳型となって、(m)RNAが生成され、このRNAが鋳型となって、アミノ酸の鎖であるタンパク質が生成される。
   (7)細胞の中では複雑な化学工場群のように、さまざまな物質が分解、生成されているが、その操業を担っている主役はタンパク質である。タンパク質は、人為的な化学反応では考えられないほどの効率で、(酵素)反応を進めている。この反応には水が介在している。
   (8)生命は互いに類縁関係にあると同時に、互いを栄養素としたり、昆虫が(顕花植物の)花の受粉を助けたりというように、さまざまな共生関係によって依存しあって生存している。

    我々が知っている生命は地球上のものである。この意味では上記の特徴は、地球型生命の特徴とも言ってよい。果たして地球型以外の生命が存在するか否か、あるいはそうした非地球型生命を創造できるか否かは、生物学に残されている課題である。

ゲノム解読

    一般に生物は、単一細胞からなる単細胞生物と複数の細胞からなる多細胞生物に分類される。それらの細胞の中には、(赤血球のような、できた後でDNAが消失してしまう細胞を例外とすれば)DNAが存在している。多細胞生物の場合も、その構成要素である個々の細胞は、すべてある最初の細胞が分裂してできてきた系列に属しており、分裂の際、DNAは複製されて受け渡され、次の分裂まで保持されていると見なされるので、結局個体を構成する(体)細胞の中のDNAはすべて同じになる。したがって、DNAの塩基配列も同じと見なされる。結局、細胞の中のDNAは、個体ごとに一つに決まることになる。このDNAを、その個体のゲノム genome と呼ぶ。実際のDNAは、大腸菌のような単細胞の細菌では、環状につながっており、ヒトであれば、23対の染色体として分割されて存在している。
    こうしたDNAを構成する塩基の並びを決定するのが、ゲノム解読 genome sequencing である(DNAは2本鎖であるが、そのうちの1本の塩基配列が決定されると、他方は自動的に決定される。それは、配列が決定された方のDNAの鎖と弱く結合しているもう一方の鎖の塩基配列が、一方の塩基がAなら他方はT(あるいはその逆)、一方がGなら他方はC(あるいはその逆)というように相補の規則にしたがっているからである)。
    エイブリーらの発表から約60年、ワトソンとクリックの論文発表から約50年過ぎた2003/4年に、ヒトゲノム解読計画の終了宣言がなされた。1990年からスタートしたこの計画には大量のコンピュータやコンピュータで制御された生化学の自動装置(計測ロボット)、データ解読ソフトウエアが使われた。とくに国際研究チームとは別に私企業をバックにした J. C. Venterらの方法論であるショットガン法には、大規模な計算機と数学理論が駆使された(表4-2)。

表4-2.ヒトゲノム解読計画の進展
1900年  この年から米国、英国、日本などを含む、国際研究組織でスタート
1955年  インフルエンザ菌 Haemophilus influenza の解読
1996年 酵母 Saccharomyces cerevisiae の解読
1997年 大腸菌 Escherichia coli K-12 の解読
1998年 線虫(C.エレガンス)C. elegans の解読
2000年 ショウジョウバエ Drosophila melanogaster の解読
2001年 ヒトゲノム暫定版の発表

参考文献

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  • J. Watson, DNA The Secret of Life, Alfred A. Knopf, NY, 2003 (訳本あり)

ゲノム配列解析技術の進歩

    今、生物医学はポストゲノムの時代 Post Genomic Era に突入したと言われている。この時代を特徴づけるのは、生物医学があらゆる科学や工学や数学まで結集した統合科学の色彩を強めていることである。この変化は保健や医療の実践にも波及しつつある。生物医学が直面している変革を一言で表現すれば、ゲノム Genome、オミックス Omics、経路網 Pathway/Network という基本技術(すなわちGOP/N)が研究の新たな機軸と知識基盤になったということである。次に、それぞれの基盤技術を簡単に紹介する。

ゲノム技術

    ゲノム genome 技術とは、文字通り、ゲノムの塩基配列を決定し、その膨大なデータを解析し、それから得られる知見を生物医学研究に役立てることを意味する。ゲノム技術は、主に2つの方向に進展している。その一つは特定の生物種のゲノム塩基配列の変異の探索であり、もう一つは解析対象を増やすことである。
    前者に関しては、ヒトのゲノムの変異をしらべることが大きな課題になっている。最初のヒトゲノム解読計画では、複数のヒトのDNAが解析試料として使われたが、その後の研究目標は、異なる人種や個人の間の配列の相違(変異 variation)を明らかにすることに努力が傾注された。
    ゲノムの塩基配列の変異の典型的な例が、一塩基多型 SNPs(Single Nucleotide Polymorphisms)やコピー数多型 copy number variation である。一塩基多型データは、いわゆる医薬品の効き方の個人差を決定する因子として、医薬品会社が注目し、コンソシアムを結成するなどして積極的に収集に乗り出した。その後、一塩基多型データは、医薬品の治験における対象者を適切に選択する方法論としての、いわゆるファーマコジェノミックスPGx (pharmacogenomics) や、患者の特性に応じて治療の薬物を選択する個別医療 personalized medicine の基礎情報として収集が加速されるようになってきた(Goldstein03)。
    それより遅れて注目されるようになったのが、コピー数多型である。このデータも、DNA塩基配列の多様性の指標として、遺伝学、疾患の理解、集団の遺伝的な特性把握などに重要であると考えられていたが、とくに疾患に関与する配列特性として注目されるようになり、やはり詳細な地図が作成されるようになった(Redon06、Skipper07)。
    ある個体の同一染色体上に連鎖している遺伝子のアレル allel の組をハプロタイプ haplotype と呼ぶが、ヒトのゲノムに見られるさまざまな変異を集めた「ハプロタイプの地図」を作成することを目標としているのが、International HapMap Project である。
    なお、ヒトを含め、さまざまな生物種のゲノムの塩基配列データを収集して、遺伝子の位置などの総合的な地図を作成しているのが米国の、ENCODE Project (http://www.genome.gov/10005107)である。
    一方、解析するゲノムの対象を拡大することは、解析に掛かる費用の低下と逆相関の関係にある。ヒトゲノム解読計画の後、J. Watson や C. Venterなど、ヒトゲノム計画を先導した研究者個人のゲノムが解読されて話題となった。その他、マウス、ラットのような実験動物やさまざまな病原微生物、稲のような食物や、ある種の疾患の患者集団、さまざまな人種、永久凍土で保存されていたマンモスや古代人のゲノムなどの解読がなされるようになっている。
    このような事業は、解析の中枢を担っている分析機器であるシーケンサー sequencer の性能と価格に大きく依存している。現在、「次世代シーケンサー」と呼ばれている高速ゲノム解読装置の開発競争が激しさを増しており、解析性能は飛躍的に向上しながら、コストは大幅にダウンしている。そこで、今や1,000人の個人のゲノムを解読する計画や、一人のゲノムの解読費用を1,000ドルに抑えるというような目標が、現実のものになりつつある(Sanderson08)。このような解読が進めば、さまざまな人種、老若男女、健常者と病者など多様なヒトの結果を蓄積しておく巨大なデータベースや、解析のための高度なソフトウエアの開発が必要になってくる。これは保健や医療分野で現に浮上しつつある大きな課題である。
    次世代シーケンサーの用途としては、この他にも、ある自然環境中で採取した、多量の微生物を含む試料のDNAを網羅的に解析するメタゲノムも盛んになってきた。そうしたアプローチで興味が持たれているのは、ヒトの腸内細菌叢を構成する全細菌のゲノム配列を網羅的に解析する研究である。このような研究は、さまざまな菌を含むヨーグルトの健康への影響などをしらべるための基盤技術になるとも期待されている。
    次世代シーケンサーは、ミツバチ研究にも大きなインパクトを与えるであろうと予測されている。例えば、ミツバチのゲノム解読を先導した G. Robinson は、こうした機器を駆使すれば、2万種と推定される多様なハチ bee のゲノム解析を迅速に進めることができ、これによって蜂類の比較ゲノム学的研究を進展させることができるだろうと言っている。同じような比較ゲノム学研究は、これも種類が多く地球上でもっとも蔓延っている動物と言われる線虫でも始まっている。

オミックス

    オミックス omics とは、 ゲノム解読に随伴して発展している網羅的な分子計測とデータ解析技術であり、普通3つの技術を意味する。第1は、遺伝子の転写産物であるメッセンジャーRNA(mRNA)を網羅的に解析する技術である。
    遺伝子の転写産物の全体はトランスクリプトーム transcriptome と呼ばれるから、それをしらべることは transcriptomics と呼ばれる。実際の計測に使われるのはマイクロアレイ microarray あるいは DNAチップ DNA chipである。こうした技術は、細胞の中での遺伝子の発現 gene expression をしらべることを意味する。最初この技術は、コストが(1枚10万円ほどと)高いことや、試料である mRNAの抽出条件が難しいことや、結果の解釈が難しいこともあって、有用性が疑問視されたこともあった(Imbeaud05)。しかし、今では当たり前の技術となっている。
    オミックスの第2は、タンパク質を網羅的に解析する技術で、プロテオミックス proteomics と呼ばれる。タンパク質の全体は、プロテオーム proteome と呼ばれる。マイクロアレイやDNAチップについても言えることであるが、細胞の中の全タンパク質の種類と量は、個体の中の細胞毎に異なっており、また、同じ細胞でも時間と置かれた環境によって違っている。この点が、ある個体では一つに決定されるゲノム(の塩基配列)解析とは決定的に違うところである。さらに、ある細胞の転写産物(mRNA)の全体とタンパク質の全体は、必ずしも相関しないことが知られている。このような理由で、この技術も最初に期待されたほどの成果をまだ上げていない。
    プロテオミックスに最も期待されているのは、疾患マーカーの探索である。疾患マーカーとは、ある疾患に罹っていることを示す証拠となるタンパク質や、治療の指標となるようなタンパク質のことである。とくに臨床で使えるようなそうしたマーカーは、なかなか見つけにくい(Anderson07)が、大きな努力が払われている。
    オミックスの最後が(2次)代謝物 metabolites を網羅的に解析する、メタボロミックス metabolomics あるいはメタボノミックス metabonomics である。metabolomics とmetabonomics は、代謝物の全体 metabolome をしらべる技術という点では、同じであるが、生体に何かの刺激を与えてその応答として代謝物をしらべる場合 metabonomics という言葉が使われる(Nicholson08)。
    メタボロミックスあるいはメタボノミックスに関しても、計測結果は細胞とその状態に依存しているという問題がある。こうした問題を解決するためには、計測対象となる単一の細胞をレーザー光線によってうまく周囲の細胞から切り離す技術が開発されているが、その適用は簡単ではなく、一個の細胞内の代謝物、タンパク質、2次代謝物の全量を計測することは、不可能でないにしても、大変なコストを伴うものになる。
    この点、英国のニコルソン(Nicholson08)らが開発している核磁気共鳴装置NMRを用いて生体から採取した液体試料に含まれる数百の化合物を同時網羅的に計測する技術は、臨床応用が可能な技術である。この技術は、食品の計測にも使える(根本09)。また、興味深いのは、微小な生物を丸ごと計測する可能性である。例えば遺伝的な性質を異にする2種類の線虫を培養し、それぞれを丸ごとの試料をして(プロトン)NMRに掛け、異なるライフステージで、その化学的な組成を比較する、というような方法である(Blaise07/09)。この方法は、ミツバチにも適用できる可能性がある。

経路網の同定

    経路網 Pathway/Network とは、数学では節 node と縁 edge からなる集合で、グラフ graph と呼ばれ、理論的な研究の対象になっている。生物医学においては、生理学的な刺激、伝達や、分子レベルの相互作用、あるいは反応の因果関係を簡略化した表現である。このうち経路 pathway は、一方向の通り道を、網 petwork/web は循環(回帰)が含まれている経路を意味する。現在、生物医学の経路網としては、生化学の代謝マップ Metabolic Map (Nicholson06)、細胞信号伝達系 Cell Signal Transduction(Hunter00)、遺伝子制御網 Gene Regulatory Network(Kauffman95, Lee02)、タンパクータンパク相互作用網 Protein-Protein Interaction Network (Pawson00, Phizicky03, Barabási04) の4つが代表的なものとされている。
    ゲノム解読、オミックス、経路網の同定という3つ技術から得られるデータの意味は、単細胞生物と多細胞生物では大きな違いがある。すでに述べたように、ゲノムはどの細胞においても(例外はあるにしても)同一と見なせるが、オミックスや経路網同定の結果は細胞毎に異なり、同一の細胞でも状況によって異なる。しかし、現実には、単一の細胞で、さまざまな計測が同時にできるわけではない。したがってゲノム情報はある個体に固有であるが、オミックスや経路網のデータは、状況や時間に依存したものであり、また極めて疎視化されたイメージである。このような事情はあるものの、オミックスや経路網のデータは、ゲノム(DNA)の配列データと同じように、生物を理解するための有用なデータとして研究者に受け入れられている。

参考文献

ゲノム技術
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Microarray
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Metabolomics/Metabonomics
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ゲノム学の意外な展開:エピジェネティクスとRNA干渉

    ヒトのゲノム解読が完了に向かっていた頃、ゲノムであるDNAの塩基配列を記号列と見立てて、これを「生命の設計図」と呼ぶ風潮があった。しかしこれが誤解であることは、次第に明らかにされてきた。DNAをテープと見立てた場合、そのテープに刻まれた指令は、4つの塩基の記号列によっては、一義的に決定されない。なぜなら指令情報がどのような結果を生むかは、状況依存的に変わってくるからだ。したがって、ゲノムが同一の一卵性双生児であっても、テープの機能は同じにならないことがある。その違いをもたらす原因として発見された現象が、DNAのメチル化 DNA methylation と、ヒストンのアセチル化 histone acetylation である。
    DNAのメチル化は、DNAを構成するシトシンの炭素がメチル(CH3)に置換されることである。ヒストンのアセチル化は、DNAが巻きついているタンパク質であるヒストンのアミノ酸の一部がアセチル化することである。DNA、あるいは、それが巻きついているタンパク質にこのような化学的な修飾が起きると、DNAがmRNAに転写される過程が影響を受けることになる。こうなると遺伝子発現、つまり、DNAからタンパク質が合成される様子も変わってくる。これがエピジェネティクス epigentics と呼ばれる現象である。
    エピジェネティクスは、双子の間でも違いが生ずる原因の一つだと考えられており(Fraga05)、また、がんなどの疾患との関係も深い(Dennis07)として、ヒトのDNAのメチル化の状態を網羅的にしらべることを目的として、Human Epigenomics 計画がいくつか立ち上げられた。これには国際的な組織もある(Jones08)。
    DNAのメチル化に較べると、ヒストンのアセチル化は、よりダイナミックな化学的修飾であるから、網羅的なカタログ化には馴染みにくい。ただこの過程は、低分子で制御されやすいと考えられているので、ヒストンのアセチル化は、ヒストン脱アセチル化酵素 histone deacetylase(HDAC)で外れるので、この酵素を阻害する薬が研究されている。その主な目的は、抗がん剤の開発である(Miller03, Dokmanovic07)。
    なお、Epigenetics の意味は多少あいまいなところがあるが、最近では、例えば「DNAの塩基配列の違いによらずに、世代を越えて安定的に引き継がれる表現型 stably heritable phenotype」とされている(Berger09)。
    RNA干渉(RNA interference, RNAi)とは、短い2本鎖のRNA(siRNA)が、配列が類似した領域をもっている mRNAを分解する仕組みのことである。この結果、mRNAは合成されても、タンパク質を合成する鋳型としては機能しなくなることがある。これはあたかもその mRNAをコードしている遺伝子の機能が抑制 knock down されたに等しいと見なせる(Nath07)。この現象は、Andrew Fire と Craig Mello によって線虫で最初に発見された(Fire98)。その後、哺乳類を含む多くの生物でこの現象が見られることが確認された。また、人工の siRNAを使ってこの現象を起こさせ、特定の遺伝子の働きを抑制する実験技法が開発され、日常的に使われるようになった。
    ミツバチ研究でもこの方法が使われている。ミツバチの女王バチと働きバチは、遺伝的には同一でありながら、食べものとして主にハチミツや花粉が与えられるか、ローヤルゼリーだけが与えられるかで、働きバチになるか、女王バチになるかが決定される。Kucharskiらは、新たに脱皮したミツバチの幼虫で、DNAメチル化酵素 DNA methyltransferase である Dnmt3 の機能を、RNAiを用いて抑制すると、70%以上がローヤルゼリーを食べさせた場合と同じような女王バチになったと報告している(Kucharski08)。Dnmt3 は、DNAのメチル化という epigenetic な働きに関係しているので、これは生殖や行動が epigenetic に制御されていることを示唆するものである。この研究は、ローヤルゼリーの効能のメカニズム解明にも新しいヒントを与えるものである。

図4-2.変わるセントラルドグマのイメージ

    もう一つRNAに関係した大きな発見は、non-coding RNA (ncRNA)と呼ばれる、DNAから転写されながらタンパク質の翻訳には使われない短いRNA鎖が沢山存在することがわかってきたことである(Sience05)。それらには、いろいろな種類があるが、その多くの機能はまだ十分解明されていない。

図4-3.遺伝子発現は内部と外部の環境に依存する

    これらの発見は、DNAという情報を刻んだ鋳型テープの使われ方は、多様性に富んでいることを示している。このことは、ヒト、マウス、ハエ、ミツバチ、線虫などを比較した場合、いわゆる遺伝子の数では、2倍ほどの違いがないが、遺伝子発現の制御(その使われ方)に関わる因子には、大きな違いがある、という事実に符合するものと考えられている。そうした因子が、(mRNAの)選択的スプライシング splicing であり、エピジェネティクスであり、転写因子 transcriptional factors とそれらの転写因子の共役因子 cofactors、そしてそれらの因子を化学修飾する機構である。
    DNAの塩基配列が安定しているのに較べると、それが働く際の調節因子は、各遺伝子に依存し、細胞内の環境に依存したダイナミックなものである。したがって、すべては「遺伝子発現機構」の複雑さに集約される。これはちょうど、音楽の楽譜は同じでも、それが演奏される音楽は、演奏する楽譜の部分の選択、演奏方法や楽器、演奏施設、などで違ってくるのに似ている。
    多細胞生物が、最初の受精卵から細胞分裂を繰り返すうちに、さまざまな特性の異なる細胞が生まれてくる(細胞分化)過程は、遺伝子発現様式が異なってくる過程と考えることができる。このことから、ゲノム解読後のゲノム学の焦点は、DNAの転写過程や転写されたRNAからタンパク質が合成される過程、さらには合成されたタンパク質の修飾(post translational modification)に移行してきている。さらに、遺伝子だけでなく、こうした過程が、病気や健康と深い関係にあることも分かってきた。
    以上を要約すれば、健康科学においても、エピジェネティクスや多様なRNAの機能、転写機構、翻訳後の修飾などの問題が、新しい重要な課題となってきたと言えよう。

参考文献

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  • The American Association for Cancer Research Huaman Epigenome Task Force and European Union, Network of Excellence, Scientific Advisory Board, Moving AHEAD with an international human epigenome project, Nature, 454: 711-715, 2008.
  • S. L. Berger, An operational definition of epigenetics, Genes Dev. 23: 781-783, 2009.
  • Utpal Nath and Saumitra Das, Silence of the Genes, Resonance, 12(4): 6-18, 2007.
  • A Fire, S Xu, M K Montgomery, S A Kostas, S E Driver and C C Mello, Potent and specific genetic interference by double-stranded RNA in Caenorhabditis elegans, Nature, Vol.391, pp.806–11, 1998.
  • R. Kucharski, et al., Nutritional Control of Reproductive Status in Honeybees via DNA Methylation, Science 319: 1827-1830, 2008.
  • Science誌の2005年9月2日号は、RNA特集になっている。
  • Zhen Liu, Alhousseynou Sall, and Decheng Yang, MicroRNA: an Emerging Therapeutic Target and Intervention Tool Int J Mol Sci., 9(6): 978–999. 2008.

GOP/Nの医療や健康対策へのインパクト

    GOP/N、すなわちゲノム解読、オミックス、経路網の同定という3つの技術が台頭してきたのは、1990年代以後のことであり、生物医学と関連分野に広く普及し始めたのは、2000年以後である。しかし今やそれらの技術は、それまでの研究の方法論と相補的な役割を果たす基盤技術として生物医学に定着してきた。さらに、膨大なデータを産生するこのような技術の登場は、必然的にデータ処理のための計算機利用を促進するとともに、それらのデータや解析結果や研究成果までも、インターネット上に置き、公開するという風潮を後押ししている。このことは、生物医学研究者の中に、計算機を利用するための専門家を擁する必要性も喚起した。
    ヒトゲノム解読計画を嚆矢とするこうした生物医学研究の新しい潮流は、全体として生物医学の研究のスタイルを変貌させている。だが、それだけにとどまらず、保健や医療サービスの実践にも大きな変化を及ぼすだろうと期待されている。そうした変化は、次のように要約されるだろう。

  1. 生物医学の進歩が加速度的となる。
  2. 生物医学や医療は大量のデータを扱わねばならなくなり、解析や解釈を含めて情報計算の技法とそれらの専門家に依存せざるをえなくなる。
  3. 遺伝学の知識が医学知識の基盤になる。
  4. 医学研究はヒトとマウスだけでなく、酵母、線虫、ハエなどを含むさまざまなモデル生物を材料とするようになり、比較ゲノム学が盛んになる。
  5. 疾病の概念が、臓器ごとの遺伝子と経路網を基礎としたものになる。
  6. 患者の個人的な特性と状況を考慮した、画一的でない個別的な医療が求められる。
  7. 病状が進んだ段階での対策だけでなく、予兆的な段階での対策、さらには予防的な対策への対応が求められる。
  8. 医療機関の利用者とサービスの提供者が情報知識を共有することが求められる。

    こうした変化の一部はすでに起きているが、このような変化を加速するためには、新しい仕組みが必要である。我が国の場合、そうした仕組みづくりは、まだ顕著なものになってはいないが、米国の動きははっきりしたものだった。
    米国の生物医学研究の司令塔である National Institute of Health (NIH) は、ヒトゲノム解読計画の完了が宣言されようとした頃から、その成果を臨床や医療サービスに効果的に移管することを目的に、新長官としてザフニ Elias A. Zerhouni が就任した2002年から、新しい行動計画 Roadmap の策定を開始した(http://nihroadmap.nih.gov/)。2004年9月に具体的に動きだしたこの構想の最も重要な点は、基礎研究を臨床医学の問題解決へ役立てる仕組みの構築であった(Zerhouni05)。例えば、ゲノム解読を行う National Intramural Sequencing Center (http://www.nisc.nih.gov/)と Clinical Research Center の連係である。
    ブッシュ政権からオバマ政権に交代した2009年には、NIHの長官も交代し、新長官にはゲノム解析センター National Human Genome Institute の所長として米国のゲノム解析をリードしたコリンズ Francis S. Collins が就任した。このことは、米国の生物医学研究がますますゲノム解析技術を基礎にして推進されるであろうことをうかがわせた。コリンズは、その就任演説の一つでNIHがめざす方向として、加速される生物医学研究の成果を臨床(実践医療)に円滑に移管する政策を継続すると言っている。また医療が、個人への対応 personalized や、予防 preventive を重視する方向に進むべきことも挙げている(Collins09)。
    シアトルにあるシステム生物学研究所 Institute for Systems Biology の所長であるフッド Leroy Hood は、Genome-Omics-Pathway/Network による生物医学革命(彼の言葉では Systems Biology)の推進者であるが、ゲノム医療が開く近未来の可能性として、4つのPを挙げている(Auffray09)。それらは、Predictive、Personalized、Preventive、Participatory である。この4つのPは、コリンズが提唱している新しい医療の概念とも重なる。この4Pとは、

  1. Predictive ・・・・ 投薬計画の精密化、最適治療など
  2. Personalized ・・・ Pharmacogenomics PGx などの実用化
  3. Preventive ・・・・ 予防や予兆での介在、サプリメントや健康食品への対応
  4. Participatory ・・・ Self-Care、インターネット/ドラッグストア時代

と理解することができよう。こうした方向性は先にあげたGOP/Nの生物医学へのインパクトと重なるものである。
    いずれにしても、生物医学研究がこのような方向に進んでいくのは、ほぼ確実であろう。このことは、健康食品のような予防的な対策や、個人の特性に配慮した投薬や予防法が普及していくことや、個人がより自分の健康維持に関心を示す時代がやって来ることを予想させる。こうした変化は、医薬品研究も開発だけでなく、承認された薬が適正に使用されるような研究にも力を入れていかなければならないことを意味している。
    こうした視点から現在の医薬品の規制と研究体制を見ると、すでに上市されている薬や使われているサプリメントの研究にも努力を傾注していかなければならないと言える。そうした動きは、米国ではすでに始まっている。
    例えば米国では、分子標的薬を含む最近上市された薬が、安全性への配慮から市場から撤退したり、再上市されたりという事例が増えている。そこで、医薬品の安全に関わるFDAの役割を見直すべきだという助言が Institute of Medicine (IOM) からなされている(Psaty06、Curfman06)。こうした動きは、やがて我が国にも波及してくるものと予想される。

参考文献

  • Elias A. Zerhouni, US Biomedical Research Basic, Translational, and Clinical Sciences JAMA. 294:1352-1358, 2005.
  • C. Auffray, Z. Chen, L. Hood, Systems medicine: the future of medical genomics and healthcare, Genome Medicine, 1(2), 2009.
  • Collins のNIH長官への就任講演は、NIH VideoCasting, NIH All-Hands Town Meeting with Dr. Collins, August 17, 2009(http://videocast.nih.gov/Summary.asp?File=15247)で視聴できる。
  • B. M. Psaty, S. P. Burke, Protecting the Health of the Public - Institute of Medicine Recommendations on Drug Safety, New England Journal of Medicine, 355:1753-1755, 2006.
  • G. D. Curfman, S. Morrissey, and J. M. Drazen,Blueprint for a Stronger Food and Drug Administration, Volume 355:1821, 2006.(これは以下のサイトで全文が音声でも聴ける。 http://content.nejm.org/cgi/content/full/355/17/1753/DC1)
  • IOMからの報告の要約は以下から入手できる (http://www.iom.edu/CMS/3793/26341/37329/37331.aspx)

生物医学研究支援情報計算基盤

    以上述べたように、生物医学は大きな構造変革期に突入している。科学の視点から見た時、この構造変革の一つは、ITを駆使して、膨大なデータを整理、蓄積、解析、提供するための基盤的な組織がつくられ、そこで情報計算の専門家が働くようになることである。こうした動きはすでに先進国では始まっているが、我が国ではまだ遅れている。

図4-4.ゲノム解読革命によって開けてきた生物医学研究を支援する情報計算基盤の概念図
(Ⅱ. ミツバチ研究の現状 —現在の生物医学におけるミツバチ研究—  図2-2.Post Genome 時代の
生物医学研究の基軸 Pathway/Network to Disease and Drug Discovery に同じ)

    ここでいう、生物医学研究を支援する情報計算基盤というのは、実験研究を支援するために、ゲノム解読やオミックスや経路網などの多様なデータや、統計学、データ解析学、バイオインフォマティクスなど多様な解析技法を用意しておくことである。そのような情報計算基盤の雛形については、次を参照されたい。生物医学研究を支援する情報計算基盤

参考文献

    生物医学研究支援情報計算基盤の構築でとくに重要なのは、従来の遺伝学をゲノム遺伝学に拡張した遺伝統計学である。

  • 上辻茂男、遺伝統計学へようこそ!、(オンライン誌)「BTJジャーナル」に連載されたシリーズ、総集編が入手できる。(http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/pdf/btjjn0905b.pdf)
  • T. Strachan & A. P. Read, Human Molecular Genetics 3, Garland Science, 2004.(笹月健彦、辻省次 監訳、ヒトの分子遺伝学 第3版、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2005)

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