ミツバチが、自らの巣を守るために利用している
防御壁“プロポリス”。
ここでは、その様々な機能について、
科学的な根拠を基に説明します。
天然の抗菌物質・プロポリス
ミツバチは、新芽や蕾、樹皮を巡って、そこから分泌される樹脂(じゅし)を集めることがあります。この樹脂は巣に持ち帰られた後、蜜蝋(みつろう)と混ぜられ巣材として利用されます。そのためミツバチの巣箱では、粘着性のある樹脂状の固形物がよく観察されます。これが”プロポリス”と呼ばれるものです。
巣材として利用するだけなら、働きバチが分泌する蜜蝋で十分なようにも思われますが、なぜミツバチはプロポリスを作る必要があるのでしょうか。この謎を解くカギは、実は、ミツバチの集める樹脂の性質にあります。
樹脂には優れた抗菌作用をもつ成分が含まれます。というのも、植物は、自らが傷つけられると、傷口を守るために樹脂を分泌し、また、芽を病原性の微生物から守るために新芽や蕾に抗菌作用をもった物質を送っているのです。
ミツバチはこの抗菌作用を活用し、プロポリスを巣の隙間に塗ることで、温かく、湿度が高い巣の中でも細菌の繁殖を抑えて、巣を清潔に保つことができるようにしています※1。プロポリスは、病原性の細菌やウイルスの巣への侵入を防いでミツバチの仲間を守る”防御壁”といえるのです。
蜂蜜の利用を目的に、古くからミツバチと付き合ってきた人間が、このプロポリスの特性に注目しないはずがありません。プロポリスと人間との付き合いは意外に古く、少なくとも紀元前数百年の古代エジプト時代から、その抗菌効果が知られていたとされています。その証拠に、ミイラを作る際の防腐剤として利用されていたこと※2が明らかになっています。
当時は経験的にプロポリスの抗菌効果、防腐効果が知られ、利用されてきたわけですが、今世紀に入ってからは、ヨーロッパを中心に科学的な研究が進み、様々な有効性が確認されました。その結果、現在ではドイツをはじめ、一部の国で正式に医薬品としても認可されて、医療現場で広く利用されています。
日本では、1985年に名古屋で開催された第30回国際養蜂会議にてプロポリスの有用性について発表されたことが発端となり、研究者だけでなく、一般の方にも知られるものとなりました。さらに、1991年に当時の国立予防衛生研究所(現・国立感染症研究所)の研究グループがブラジル産プロポリスに抗腫瘍活性(腫瘍細胞が活発に増殖するのを抑えたり、腫瘍細胞を死滅させたりする働き)をもった物質が含まれていることを発表※3し、その後すぐ、林原生物化学研究所の研究グループが、ブラジル産プロポリスから抽出したアルテピリンCが抗腫瘍作用を持つことを発表するなど、世界各国の研究者が先を競って研究するようになったことも、プロポリスへの関心を高めることになりました。
プロポリスは、ブラジル産が最も有名ですが、実は、アルゼンチン、イギリス、イタリア、ウルグアイ、エジプト、オーストラリア、ハンガリー、ブルガリア、ルーマニアなど、世界各国で採集※4されています。日本においても、北は北海道から南は沖縄県まで※5、わずかながらも主に研究用として採集されています。
同じミツバチ由来の物質でも、ローヤルゼリーは働きバチの咽頭腺から分泌されるため環境により中身が変わることはほとんどないといわれていますが、プロポリスは、ミツバチが集めてくる植物を原料として作られるため、起源となる植物によって、一般的に多いとされる黒褐色のものや、起源となる植物によって、暗緑色のグリーン系から赤褐色のレッド系まで様々な種類があります。
さらに近年、プロポリスの成分を調べる研究が世界各地でなされており、産地や起源植物によって特有成分が大きく異なることが明らかになりました。
例えば、ヨーロッパ産や中国産のプロポリスの起源植物の多くはポプラであり、主な成分としてフラボノイドが含まれています。他にもカバノキ科、ヤナギ類などが起源植物として確認されています。
一方、ブラジル産プロポリスの起源植物はキク科バッカリス属のアレクリン・ド・カンポ( Baccharis dracunculifolia)です。プロポリスは、樹脂を集めて作られることが多いのですが、ブラジル産プロポリスは、抗菌物質を豊富に含む新芽を集めて作られているという特徴があることがわかりました(2000国際プロポリス会議加藤学発表)。また、多く含まれる成分は、抗腫瘍活性をもつことで知られるアルテピリンCをはじめとする桂皮酸誘導体です。
このように、産地や起源植物の違いにより含まれる成分が異なるため、プロポリスを摂ることで得られる効能も様々であると考えられます。
日本で多く飲用されているプロポリスはブラジル産※6ですが、中でもブラジル南西部で採取されるものは、緑がかった色をしていることから「グリーン・プロポリス」と呼ばれ、品質の高いプロポリスとして珍重されています。その理由は、主に2つあります。
一つ目の理由は、ブラジル産プロポリス※7の成分の特徴にあります。抗菌作用、抗腫瘍作用が報告されて以来、各国産のプロポリスの成分分析が行われ、先ほども述べたように、ブラジル産プロポリスが桂皮酸誘導体中心※1のタイプであることが明らかになっています。他地域産のプロポリスが、フラボノイド中心のタイプであることを考慮すると、有用成分に大きな違いがあるといえるでしょう。
また、弊社は、2009年にプロポリスに含まれる15種類の機能成分を一度に分析できる独自の技術を開発。この技術を用いて詳細な成分分析を行ったところ、桂皮酸誘導体であるアルテピリンCを多く含んでいることが改めて確認されました。
もう一つの理由には、ブラジル産のプロポリスを作る蜂が、日本の養蜂業者が飼育しているセイヨウミツバチとは異なるアフリカ蜂化ミツバチであることが関わっています。アフリカ蜂化ミツバチは、アフリカミツバチとセイヨウミツバチとの交雑種で、高い防御本能を持つミツバチであることが知られているのですが、実はこの防衛本能の強さがプロポリスの品質の向上につながるというのです。
高い防衛本能を持つアフリカ蜂化ミツバチは、巣を守るのに重要な役割を果たすプロポリスを早く、大量に生産します※7。そのため、アフリカ蜂化ミツバチから得られたプロポリスは高い抗菌性を持つと言われています。
ブラジル産プロポリスについては、起源植物の解明や成分の研究に加えて、抗菌、抗ウイルス、抗腫瘍、抗酸化、抗炎症、抗アレルギーなどの様々な作用に関する研究の成果が報告されてきました。さらに近年、ヒト試験による信頼性の高い研究も進んでおり、抗酸化作用をもつことや花粉症の症状を軽減させることなどが報告されました。
しかし、これらは、伝承されるプロポリスの有用性のごく一部に過ぎず、これからも研究が益々活発に行われることが期待されます。
自らの健康を自身で管理し守ることが求められる昨今、予防医学的天然素材であるブラジル産プロポリスの研究から目が離せません。