研究成果のご紹介

ローヤルゼリーとプロポリスはアレルギー性鼻炎の症状を緩和する
〜抗アレルギー作用を発揮するメカニズムを解明〜

徳島大学大学院 医歯薬学研究部 福井 裕行(2014年度採択)

アレルギー性疾患の患者は世界的に増加しており、なかでも、アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎、好酸球増多性鼻炎の3疾患の総称である鼻過敏症は、完治が難しい病の代表といえる。アレルギー反応に関与する主要因子のひとつとしてヒスタミンが知られており、アレルギー性鼻炎の患者の鼻粘膜ではヒスタミンH1受容体が高レベルに発現している。しかし、ヒスタミンが関わる経路を抑えるだけでは、アレルギー症状を完全に改善することはできない。そのようななか、ヒスタミンが関わらない機構として、インターロイキン(IL)-9が、アレルギーの発症に重要な役割を果たしていることが明らかになっている。

ミツバチ産品は古くから、アレルギー性疾患を含めた多くの病気を改善するための食品として利用されてきた。例えば、ローヤルゼリーはアレルギー発症の引き金となる免疫グロブリンE(IgE)の産生や、アレルギー反応を起こす原因細胞のひとつである肥満細胞からのヒスタミンの放出を抑えることが報告されている。また、プロポリスはアレルギー反応に関与する主要因子のひとつであるロイコトリエンの放出を抑えることがわかっている。しかし、ヒスタミン等の化学伝達物質がアレルギー反応を誘導するまでの経路に対して、ローヤルゼリーおよびプロポリスがどのような影響を与えるのかは明らかになっていなかった。そこで、徳島大学大学院医歯薬学研究部の福井裕行氏らの研究グループは、アレルギー性鼻炎に対するローヤルゼリーおよびブラジル産プロポリスの抗アレルギー作用と、そのメカニズムを検証した。

はじめに、アレルギー性鼻炎モデルを複数のグループに分け、体重1 kgあたりローヤルゼリーを40 mgもしくは80 mg、またはプロポリス40 mgもしくは80 mgをそれぞれ3週間毎日飲用させた。さらに、ローヤルゼリーおよびプロポリスのいずれも飲用させないグループをコントロールとした(n=5)。飲用3週間後にアレルギー症状の検査を行ったところ、コントロールグループと比較して、ローヤルゼリーまたはプロポリスを飲用したグループでは、くしゃみの回数が少なくなり、鼻漏や鼻の腫れといった症状の軽減が確認された。

さらに、ローヤルゼリーおよびプロポリスが抗アレルギー作用を発揮するメカニズムを詳しく解析したところ、細胞内シグナル伝達に関わるプロテインキナーゼC(PKC)δおよび活性化 T 細胞核因子(NFAT)の活性を抑えることで、ヒスタミンH1およびIL-9の発現を抑制することが明らかとなった(図)。

プロポリスのP. gingivalisの対する抗菌作用機序の詳細が明らかとなった

以上の結果から、ローヤルゼリーおよびブラジル産プロポリスが、ヒスタミンH1受容体とIL-9という、アレルギー発症に関わる主要な因子の発現をいずれも抑えることで、アレルギー性鼻炎を緩和することが示唆された。

 

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